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絵本紹介(168) 鳥よめ2015年02月08日 16:46

題名   : 鳥よめ
作     : あまん きみこ
絵     : 山内 ふじ江
発行所  : ポプラ社

 今回のご紹介は、数々の優しい童話を創作されているあまんきみこさんの新作絵本です。あまんさんの平和への思いが描かれています。


   子供の時の怪我がもとで右ひざがうまく曲がらない周平さんは、兵隊には行かず、人里離れた岬の灯台守の仕事をしていました。

 今朝も夜通し灯台の火を守っていた周平さんは、明かりを消して灯台から降りてきました。
 周平さんが扉を開けて外に出ると、そこには白い着物を着た細い娘が、朝のまぶしい光を背に受けて立っていました。そしてその娘は、周平さんに向かって「ありがとうございました」とお礼をいったのです。


 お礼を言われる心当たりのない周平さんは、娘に人違いではないかと応えますが、娘は自分は周平に命を救われたウミネコだと告げました。

   それから周平さんと娘の生活が始まりました。家の中はきれいに片付き、毎日おいしいご飯が用意され、娘につられて笑いながら、周平さんは生まれて初めて、胸がほかほかにあたたまる幸せを知りました。<
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 ただ、周平のそばに居たくて神様に鳥からヒトの姿にしてもらった娘は、毎日背中にたたんだ翼を広げてはばたかないと死んでしまいます。しかもその姿をヒトに見られると、その視線はするどい刃になって、娘は刺殺されてしまう掟なのでした。

 その時代、日本は戦争の時代でした。
 戦局は日増しに厳しくなって、敵の飛行機の目印にならないように、灯台の火は消され、白い壁は土色に塗り替えられました。

 やがて、六人の兵隊が灯台を守りにやってきて、。周平たちの住まいで寝泊まりをしました。

   一日中兵隊たちの目があるために、娘は簡単には翼を広げて飛び回ることができなくなり、だんだんと弱って行きます。

 その姿を見かねた周平さんは、用事をつくって娘を灯台から遠くに連れ出し、思いっきり飛ばせてあげることにしました。

 でも、ちょうど周平さんと娘が留守の時に、灯台が敵の飛行機に爆撃されて、兵隊さんにけが人がでました。
 兵隊の隊長は、周平さんが前から敵と連絡していた、白い鳥を飛ばして合図を送っていた、と言って、周平さんをとらえてしまいました。



   人里離れた小さな灯台でささやかでも幸せな暮らしを送っていた心優しい青年と鳥が姿を変えた娘。 そんな二人の小さな幸せまで、国をあげた戦争の渦の中に巻き込まれて、壊されてしまいます。
 個々人の幸せを犠牲にして、戦争で一体何を守るつもりだったんでしょうねぇ。「国民の生命と財産を守るため」とか、「責任は、私にある」なんて簡単に口にするけど、ちっとも中身が無い人なんて、ぜ~んぜん信じられないなぁ。

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