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新宿発 限界集落行き2014年01月07日 23:08

 新年ですし、まとまらない辛口のボヤキ、ご祝儀のつもりでどうかご容赦を。
 
 昨日の夕方、新宿駅で慌てて飛び乗ったバス。
 あれ、乗り間違えたかなと思わず降りて行先を確認したほど、お爺ちゃん、お婆ちゃんでほぼ満席。それはそれでスゴイ圧迫感でした。

 驚いてぼやぼやしている間にもお年寄りが次々乗ってきて、あっという間に満席になってしまいました。お蔭で発車間際に乗り込んだ背筋が曲がって杖をついた90歳くらいのお爺さんを見ても誰も代わってあげられず、件のお爺さんは危なっかしく立っているしかありませんでした。

 私の近くの席のお婆さんは、午前中に病院に出かけたのに、待たされて待たされて、昼ごはんも食べられなかったと、人工関節の入った膝をさすりながら独り言のように嘆いています。

 お年寄りの誰もが体のどこかにトラブルを抱えていそうで、伏し目がちで、車内にはかすかに膏薬の匂いがしていました。

 そんなお年寄りたちが、新宿からいくつ目からの停留所でどっと降りて行きます。地名を見ると、最近お年寄りの孤独死が相次いで、都市の中の限界集落と話題になった団地の近く。
 表通りに面した高いビルやマンションが覆い隠していますが、すこし奥に入ると小さな木造住宅やアパートがたくさん残る地域です。
 
 終戦後、焼け野原の都心や下町から移り住んだ人達がバラックで街を作り、そのまま人も街もすっかり歳をとった地域、と、どこかで誰かに聞いたように思います。

 もちろん若い人も住んでいるのでしょうが、バスを貸し切るほどたくさんのお年寄りが、固まって降りて行った地域は、確かにTVで見る地方の限界集落の絵と重なって見えました。


 前の主がとても気前の良い人から5000万円をポンと借りたバブルの塔のおひざ元に限界集落。ブラックユーモアのつもりでしょうか。

 間もなく塔の新しい主を決めるそうですが、なんだか皆さん奥ゆかしくて、主になってみたい人もなかなか手を挙げません。
 早く名乗り出てもらわなきゃ、またお金をいくらでも貸してくれるお友達を作る人を選んじゃうじゃないですか。

 限界集落の問題ばかりじゃなくて、首都高速に代表される東京のインフラ老朽化は、手をこまねいていると国の破たんのきっかけになりかねません。いやすでに手遅れなのかも。
 地球の裏側まで下手な英語スピーチに行ってもらわなくても良いから、今度こそ病んだ東京とも向き合う勇気を持った主の入城を心待ちにします。
 
 間違っても、「誠意を持って、胸襟を開いて話せば、きっとインフラにもわかって貰える。」なんて言い放つナルシストみたいなのは、もうやめときましょうよ。

黒潮に乗った鰹節2014年01月08日 23:55

 お正月に見るとはなしに見ていたTV番組のなかで、個人的に興味をそそられた話がありました。
 それはNHKでやっていた「大航海めし」とかいう、TOKIOがレポーター役で今昔の航海中に船の中で食べられてきた食事を紹介する番組。

 その中で、本題とは離れた話ですが、インド洋の島国モルディブでは昔からカツオがたくさん採れて、漁師たちは紀元前からそのカツオを700km離れたセイロン(スリランカ)まで小さな帆船で売りに出かけていたことが紹介されました。その貿易の際に、カツオが腐らないようにボイルしてさらに煙でいぶして保存性を高めて運んでいたそうです。

 それって、もろに生節ですよね。
 と、いうことは、もしかして鰹節ってモルディブあたりで生まれて、それがインドネシア、フィリピンあたりに伝わって、そこから黒潮に乗って日本に伝わってきたのでは?

 日本の鰹節の産地って、枕崎、土佐、焼津、鴨川と、ずっと黒潮の流れに沿っていますよね。もし南方から伝わってきたなら、沖縄でも昔は鰹節作っていたのかも。

 ついでに、前から思っていたのですが、いわゆるさつま揚げも似たルートで日本に伝わったのではないでしょうか?
 沖縄ではかまぼこ、鹿児島ではつけあげ、高知ではてんぷらと呼ばれていますが、どれも魚のすり身を油で揚げた食べ物。
 そのまま東に流れて小田原に流れ着くとなぜか油で揚げないかまぼこになって、仙台では軽く焼いた笹かまぼこ。

 鰹節もさつま揚げも、きっとフィリピンあたりのどこかに、同じような食べ物があるのではないでしょうか。今度ちゃんと調べてみよう。
 
 和食の専売特許みたいに思ってきた鰹節が、じつは遠く離れた南の島生まれなのかもしれない。お正月にだけ食卓に上る鈴廣の高級かまぼこは、ご先祖様がフィリピン生まれかもしれない。
 会ったこともない人々の文化が、自分たちの生活と密接にかかわっている予感。大昔小さな船で西から黒潮に乗ってやってきた人びとのことを想うと、なんかワクワクしてしまいます。

 あれっ、鰹節もさつま揚げも常識? そんなの当たり前?
 済みません、先日やっと気づきました。

絵本紹介(59) ナイト キャット2014年01月09日 23:25

題名    : ナイト キャット
文     : ジェームス ブレーク
絵     : リサ&ヨハンナ ラーソン
訳     : 角田 光代
出版社  : 実業之日本社

 本日ご紹介の絵本は昨年6月に出版された新しい本で、スウェーデンを代表する陶芸家、リサ ラーソンが家族と一緒に作った絵本です。
 リサと娘のヨハンナがイラストを、夫のジェームスが文を担当しています。

    文は飼い猫たちの自由で気ままな暮らしぶりを唄った詩になっていて、もともと持っているリズムと韻を損なわないように、原文と訳が一緒に書かれています。

   たとえば、

Lying by the fire, on the cosy rug,
Lying in my basket, feeling warm and snug.
あたたかいだんろのまえ じゅうたんに「ねそべって
 ああ、 いいきもち うとうとしちゃう

Lifted like a baby, treated like the king,
My bowl is never empty, and let me say one thing;
あかちゃんみたいにだっこされて、 おうさまみたいにだいじにされる
 おさらはいつでもごはんでまんぱい でも ひみつをおしえてあげようか

 Going out for dinner, with the one I love,
Sitting on the highest wall, the smiling moon above.
いとしのあの子と おいしいものたべにでかけて
 まちでいちばんたかいへいにこしかえて にこにこがおのおつきさまみあげるんだ

 ですので、どちらかと言うと小さな子供さん向きというより、英語を学んだ中学生から大人向きの絵本かなと思います。

   とてもかわいい猫と温かみのある色使いのイラストにリズム感のある詩。原文を声に出して読んでみるのも、おもしろいと思いますよ。

 猫って昼も夜も寝てるだけかと思ったら、いつの間にか家を抜け出して自分たちの世界を作っているんですね。
 そこ行くと犬は正真正銘昼も夜もねてるだけ、そしてオジサンも。

1/11あぷりこっとつりー こぼれ話。2014年01月11日 23:55

 今日はワン・ワン・ワンで犬の日! というわけでもないでしょうが、店のカウンター内で好き放題の看板犬たちの様子が、今日のカバーフォトになります。

 朝から日本中が震え上がった寒波の中の三連休初日。
 裏原宿はやっぱり人通りもまばら。

 あ~今日もお客様来ないのかなぁーとあきらめていたら、60代と思われる品の良い女性のお客様。
 店に入って10秒くらいで、「あら、ここの絵本は大人向けって感じですか?」とお尋ねに。
 おっ、気に入っていただけたかなと喜んで、「そうなんです!大人でも読み応えのある絵本を選んでいるんです。」と張り切ってこたえたら、「子供の絵本探してるんですけど。。。2歳の女の子。」
 ヤバ、裏目。いちばん品揃え手薄な年齢層。あわててUshiさんと二人思いつく幼児でも喜ばれそうな絵本をあれこれかき集めて、お客様に見て頂くも、「う~ん。むずかしいわねぇ。」
 残念、せっかく来店して下さったのに、今店にある絵本では納得してもらえそうにないなぁとあきらめかけました。
 でもそのお客様は一冊一冊手に取って中味を確かめ始める粘り腰。お孫さんをなんとか喜ばしてあげようとするやさしいお婆ちゃん心ですね。
 結局1時間くらいかけて3歳くらいになれば楽しんでもらえそうな絵本と雑貨の人形までお買い上げ下さいました。
 もっと在庫絵本の種類増やして、お求めに添う絵本をすぐお勧めできる、ソムリエみたいになりたいですね。


 そろそろあたりがうす暗くなりかけた夕方、いつものように散歩の為、看板犬2匹を抱えてキャットストリートに向かって出発。
 原宿通りにぶつかって左に曲がったすぐの角で、今日も欧米系のブロンド美人にばったり出会って、看板犬ともどもご挨拶。
 とても犬好きの方で、先週の土曜、日曜、そして今日と、店の営業日3日連続して同じ時間帯に同じ場所で遭遇です。「わぁお、カワイイパピーちゃん、きょうもげんきぃ?」という感じで2匹を撫でまわしてくれました。
 さすがに3回も出会うと顔見知りになったので、「アー ジブン イツモォ コナイナバショデ ナニシテ、マンネン?」と聞いてみたら、原宿を歩くいかしたファッションの子たちの写真を撮って、イギリスのウエブサイトに載せる仕事をしているのだそうです。
 えーっ!じゃぁなんでこのオジサンの写真撮らないのさぁ!

 とても寒そうにしていたので、「ワシ アッチノホウデ エホンヤァ ヤットルモンヤ。 ドヤ、 アッタカイノミモノン タダデ ノマシタルサカイ、ワイントコ ケーヘンカァ?」と誘ってみたのですが、「まだ 仕事しなきゃいけないから。アハハありがとう。」って、やんわり断られちゃいました。
 やっぱり大阪訛りの英語は怪しかったのかしら?

絵本紹介(60) MUSEUM ABC2014年01月12日 23:58

題名    : MUSEUM ABC
作     : THE METROPOLOTAN MUSEUM OF ART
出版社  : Little, Brown & Company's

 「だれでもアルファベットのAはApple(リンゴ)のAだと知っています。でも誰もがみなが同じようにリンゴを見ているでしょうか? この答えを探す場所として、世界中の最も興味深いリンゴのいくつかが見つかる、メトロポリタン美術館よりも適した所ってありますか?」

 今回ご紹介する絵本、と言うかアメリカのメトロポリタン美術館所蔵の超一流絵画の写真を贅沢につかったABC本の巻頭の言葉です。

 まずはちょっと中身を除いてみましょう。

 AはApple(リンゴ)のA

(左上リヒテンシュタイン、右上セザンヌ、左下Orchard painter、右下コーネリー)

 BはBoat(舟)のB

(左上エイキンズ、右上モネ、左下広重、右下アイヴス)

 DはDance(ダンス)のD

(左上一蝶、右上ドガ、左下ムガール時代、右下ボテロ)

 HはHair(髪)のH

(左上スチュアート、右上歌麿、左下エジプト壁画、右下オノレ)

   所変わり、人も文化も異なれば、同じ物を描いた場合でも全く違った絵になることが一目瞭然です。
 アルファベットを覚える年ごろから、個人個人の物の見方の多様性、文化の地域性の違いに気づかせて貰える子供たちは、とても幸せですね。教育って、こういう風にしてほしいなぁ。

 君が代を唄わない教員を恫喝したり、権力者に好ましい歴史を学ばせようとしたり、空気を読めと道徳教えたり、多様性を委縮させる矯正は、国と国民をもろくするだけのような気がしますけどねぇ。

 避暑地の彼の人が、ある意味オジサンで、見方を変えればぼくちゃんで、ひょっとすると匿名希望だっていいじゃないですか。ねー。

 だから人間は面白い!