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絵本紹介(239) はせがわくんきらいや ― 2015年10月29日 23:59
題名 : はせがわくんきらいや
作 : 長谷川集平
発行所 : 復刊ドットコム
不思議なタイトルに魅せられて開いてみたら、墨で書きなぐったような大胆で力強い絵が飛び込んできました。陰湿ないじめの事件が珍しくない時代ですが、子供も大人も心の中にある弱者に寄り添う気持ちに響いて欲しいお話です。
幼稚園の時、乳母車に乗って来た赤ちゃんみたいな長谷川君。
先生が「長谷川君はからだが弱いから大事にしてあげてね」と言ったので、僕はトンボを取ってあげた。
長谷川君「とんぼいらん」ゆうた。
「なんでや。」
「虫は、きらいや。」
「女みたいやなあおまえ。」
そないゆうたら長谷川くん泣いてしもた。
頭にきて「泣くな」ゆうてなぐってやったんや。
ぼくははせがわくんがきらいです。はせがわくんといたら、おもしろくないです。なにしてもへたやし、かっこわるいです。はなたらすし、はあがたがたやし、てえとあしひょろひょろやし、めえどこむいとんかわからへん。
そんな長谷川君は小学校に入るとピアノを習い始めます。
長谷川君のおばさんは、「あの子、けんかしても泣かされてばっかやからピアノで勝つんやゆうてならいよんよ」
「なあおばちゃん、なんで長谷川くんあんなにめちゃくちゃなんや。」
するとおばちゃんはため息をついて、長谷川君は赤ん坊の頃ヒ素入りミルクを飲んで体を壊してしまったのだと言いました。
「あの子と仲ようしてやってね。」ゆうておばちゃんはキャンデーくれたった。そやから山もいっしょに連れてったる気になったんやで。
長谷川くんもっと早うに走ってみいな。
長谷川くん泣かんときいな。
長谷川くんわろうてみいな。
長谷川くんもっと太りいな。
長谷川くんごはんぎょうさん食べようか。
長谷川くんだいじょうぶか。長谷川くん。
長谷川くんといっしょにおったらしんどうてかなわんわ。
長谷川くんなんかきらいや。大だいだいだいだあいきらい。
あと書きを読むと、この絵本の長谷川くんは作者長谷川集平さん自身がモデルのようです。1955年生まれの長谷川さんが少年だったころは、まだ乱暴だけど弱いものに寄り添うガキ大将がいた時代だったのでしょうね。「きらいや」と言っている主人公の暖かさが伝わってきます。
私自身も子供の頃から体格が良かったので、誰に言われるでもなくクラスのひ弱な男子は乱暴者から守ってやらねばと、なんとなく義務感を持っていました。
今の子供たちのいじめは、ターゲットを作って集団でひどいことをする、誰も止めないと聞いても、子供がそんな計算高い陰湿な世界に暮らしているなんて信じ難いところです。
大人も子供も、この絵本のようなゆっくりした時間の流れで中に生きられたらいいのに。
作 : 長谷川集平
発行所 : 復刊ドットコム
不思議なタイトルに魅せられて開いてみたら、墨で書きなぐったような大胆で力強い絵が飛び込んできました。陰湿ないじめの事件が珍しくない時代ですが、子供も大人も心の中にある弱者に寄り添う気持ちに響いて欲しいお話です。
幼稚園の時、乳母車に乗って来た赤ちゃんみたいな長谷川君。
先生が「長谷川君はからだが弱いから大事にしてあげてね」と言ったので、僕はトンボを取ってあげた。
長谷川君「とんぼいらん」ゆうた。
「なんでや。」
「虫は、きらいや。」
「女みたいやなあおまえ。」
そないゆうたら長谷川くん泣いてしもた。
頭にきて「泣くな」ゆうてなぐってやったんや。
ぼくははせがわくんがきらいです。はせがわくんといたら、おもしろくないです。なにしてもへたやし、かっこわるいです。はなたらすし、はあがたがたやし、てえとあしひょろひょろやし、めえどこむいとんかわからへん。
そんな長谷川君は小学校に入るとピアノを習い始めます。
長谷川君のおばさんは、「あの子、けんかしても泣かされてばっかやからピアノで勝つんやゆうてならいよんよ」
「なあおばちゃん、なんで長谷川くんあんなにめちゃくちゃなんや。」
するとおばちゃんはため息をついて、長谷川君は赤ん坊の頃ヒ素入りミルクを飲んで体を壊してしまったのだと言いました。
「あの子と仲ようしてやってね。」ゆうておばちゃんはキャンデーくれたった。そやから山もいっしょに連れてったる気になったんやで。
長谷川くんもっと早うに走ってみいな。
長谷川くん泣かんときいな。
長谷川くんわろうてみいな。
長谷川くんもっと太りいな。
長谷川くんごはんぎょうさん食べようか。
長谷川くんだいじょうぶか。長谷川くん。
長谷川くんといっしょにおったらしんどうてかなわんわ。
長谷川くんなんかきらいや。大だいだいだいだあいきらい。
今の子供たちのいじめは、ターゲットを作って集団でひどいことをする、誰も止めないと聞いても、子供がそんな計算高い陰湿な世界に暮らしているなんて信じ難いところです。
大人も子供も、この絵本のようなゆっくりした時間の流れで中に生きられたらいいのに。
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