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絵本紹介(185) あたまにつまった石ころが2015年04月08日 10:43

題名    : あたまにつまった石ころが
文     : キャロル オーティス ハースト
絵     : ジェイムス スティーブンソン
訳     : 千葉茂樹
発行所  : 光村教育図書

 不思議な題名に惹かれて手に取ってみた絵本です。内容は、頭の中が石でいっぱいなのかと思ってしまうほど鉱物が大好きなお父さんの半生のお話しでした。石好の人に限らず、いつの時代もぶれない人の生き方って幸せそうです。


 子供の頃多くの人が、切手、コイン、ビンの蓋、いろいろな物を集めた経験を持っていますよね。
 作者のお父さんは子供の頃、暇を見つけると石垣の近くや採石場で石を集めてきて、「あいつは、ポケットにもあたまのなかにも石ころがつまってるのさ」とまわりの人から言われていました。


 大人になったらなにになりたいんだい?と聞かれたら、「なにか、いしとかんけいのあることだったらいいなぁ」と応えていましたが、石ころじゃぁなかなかお金になりません。

   そこでお父さんはガソリンスタンドを始めましたが、お店の中にはきれいに棚を作って自慢の石を、種類やとれた場所を書いた手書きのラベルと一緒に並べました。


 自動車の大衆化の波に乗って、一時は繁盛していたお父さんのガソリンスタンドは、やがて大恐慌の時代には誰も自動車に乗れなくなって、お客さんが来なくなりました。
 でもそんな時代でもお父さんは子供たちをつれて珍しい石をさがしに出かけました。

 いよいよガソリンを入れに来るお客さんがいなくなって、ガソリンスタンドを閉めたお父さんは、街で日雇いの仕事でも引き受けて働きました。仕事が無い日は科学博物館に通って、石を飾ったガラスケースの前で一日中過ごしました。

 ある日いつものように石を見ていたお父さんがふと気が付くと、目の前に女の人が立っていました。

 女の人が「なにか、おさがしものでも?」と尋ねたので、
 お父さんは「自分のもっているのより、いい石をさがしているんです」と応えます。
 すると女の人は「どのくらい見つかりました?」
   「10個です」
 博物館には世界中の何百個という石が飾られているのに、「たったの10個なの」 女の人はとてもおどろきました。

 その女の人との出会いは、お父さんの運命を変えました。

 女の人はその博物館の館長でした。
 館長は大学を出ていないお父さんを、最初は博物館の夜の管理人に雇って、理事会を粘り強く説得してやがてお父さんを鉱物学部長として迎えました。
 お父さんも館長の期待
に応えて、中年を過ぎて働きながら大学に通って鉱物以外のことも学びました。
 そして館長が引退すると、その後をついで博物館の館長になったのです。

 作者は父ほど幸福な人生を送った人をわたしはほかに知りませんと語っています。
好きこそものの上手なれと言いますが。好きなことを持っていれば、多少に苦労や貧乏は小さな問題なのでしょうね。誰でも子供の頃にたわいのない夢や憧れを持っていたはずなのに、成長するにつれていろいろな言い訳を作ってあきらめてしまうことが多いですよね。
 せめて子供の夢をあきらめさせるばかりの大人には、ならないでおきたいものです。