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絵本紹介(261) だれのものでもない岩鼻の灯台2016年02月18日 23:52

題名    : だれのものでもない岩鼻の灯台
文      : 山下 明生
絵      : 町田 尚子
発行所   : 絵本塾出版

 ちょっと変わった題名の、灯台が主人公の絵本です。灯台が主人公なんて、今までありましたでしょうか?ちょっと思い当たりませんが、老いの域に片足を突っ込んだ者としては、共感できるお話しでした。


 岩鼻(岬のさきっぽ)の灯台は、何年も何年も沖を通る船の安全な航海を守って来ましたが、ある日突然お役御免になりました。
 それまで灯台で暮らしていた灯台守りの家族が引っ越して行ってしまうと、灯台はひとりぼっち。


 「さみしい さみしい」 岩鼻の灯台はすすり泣きましたが、聞こえるのは波の音だけです。

 冬が過ぎて春になったころ、独りぼっちの灯台に久しぶりに声をかけた者がいます。

 「ちょっと おじゃましても いいですか?」


 声の主は近所ののら猫で、増えた家族と一緒に間借りをさせて欲しいと言います。

 「いいんじゃない。 もう ここは、 だれのものでも ないんだから。」  灯台ははやる気持ちを抑えて答えました。

 猫たちが二階に入居すると、その噂を聞きつけて、また間借りさせて欲しいという者がやってきました。今度はムササビの一家です。


 灯台はやっぱりうれしい気持ちを隠してそっけなく「いいんじゃない。 だれのものでもないんだから。」

 ムササビの後からも、イノシシ、カモメ、トビハゼの親戚のヨダレカケと無人になった灯台には次々と棲みかを求めて動物たちがやってきました。

 その度に灯台の答えはクールで、「いいんじゃない。 だれのものでもないんだから。」

 灯台はどんどん賑やかになっていきました。

 老いてお役御免になって、誰のものでもなくなって、独りぼっちになって、さぞ寂しかったことでしょう。なんか、何年か後の自分のことの様で、身につまされます。
 でも 「誰のものでもない=みんなのもの」 という事で、とても楽しい老後が送れていますね。
 「会社の一員でない=だれとでも気軽につきあえる」 世の定年間近のオヤジの皆さま、参考にして頑張りましょうね!(あっ、そんなオヤジがこのブログ見ている訳ありませんね。。。。)