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絵本紹介(130) 千年もみじ2014年09月25日 23:36

題名    : 千年もみじ
文     : 最上一平
絵     : 中村悦子
発行所  : 新日本出版社

 物語に里山の風景が美しい言葉で表現されていて、目を閉じると懐かしい原風景が瞼の奥に浮かんでくる、そんな絵本です。イラストは淡い水彩絵の具で色付けされて、柔らかさや暖かさが伝わってきます。


 八雲川の上流にある八雲集落に暮らすともあきは、川で釣りをしたり、ヤマメを突いたり、泳いだり、自然の中でのびのびと遊んで大きくなりました。


 ある夏、川を遡ってきたウナギを釣って帰ったともあきでしたが、じいちゃんはあまり喜びません。不思議がるともあきに、じいちゃんは、お兄さんが戦争に行って、ウナギの故郷のフィリピン近くの海で死んでしまったことを話します。兄さんが帰って来たようで、ウナギを捕まえることも、食べることもできないのだと。

 秋になって、ともあきの家に、じいちゃんの兄さんと戦争で同じ部隊にいた人の息子さんが訪ねてきます。
 その人のお父さんは、じいちゃんの兄さんから、生きて日本に帰ったら、自分の故郷にある千年もみじを一緒に見に行こうと誘われていましたが、帰国後も約束を果たせず亡くなりました。
 そこで、代わりに息子さんが千年もみじを探しにきたのでした。

 ともあきとじいちゃんは、息子さんを、じいちゃんの兄さんが遠い南の空の下で夢見て戻れなかった千年もみじまで、案内することを決めます。ともあきにとっては初めての千年もみじとの出会いです。八雲川のずっと上流から山に入って、たくさん歩いて、三人はとうとう千年もみじにたどり着きました。
 何百年も、どこにもいかず、ずっとそこに根を張ってきた千年もみじの大きさに、ともあきは思わず息を飲みました。

 おおきく息を吸い込むと、体の中まで紅いいろに染まりそうでした。


 ともあきは爺ちゃんの兄さんが、千年もみじにどんな思いを託して戦争にいったのかを考えながら、幹に抱き付いて、中から聞こえる音に耳を澄ましました。


 樹木の中には、屋久杉みたいに、人間の寿命の何十倍も生き続ける生命力を持った種類もありますね。もしそういう樹木に心があったら、人の一生はどんなふうに映るのでしょうね?いろいろあって楽しそう?せかせかしてて苦しそう?
   大木の幹に耳をあてて、木の言葉に耳を澄ませてみたい気持ちにさせられました。

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