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絵本紹介(124) ヒワとゾウガメ2014年09月04日 23:33

題名   : ヒワとゾウガメ
作     : 安東 みきえ
絵     : ミロコマチコ
発行所  : 佼成出版社

 今回のご紹介は、今年5月に発売された新しい絵本です。ガラパゴス諸島の一つの島に、たった一頭だけ生き残っていたピンタゾウガメのロンサムジョージをモデルにした、孤独について考えさせられる素敵なお話です。


島に一頭だけしかいないゾウガメの甲羅の上でで、小鳥のヒワがおしゃべりをしています。
 「あたしたち ともだちだから いつも いっしょだよ」
 ゾウガメにはヒワの声は聞こえていましたが、知らんぷり。
 だって、ゾウガメには声が無くて、おしゃべりはできません。

 ある日ヒワがゾウガメに言いました。

 「ねえ、うみの むこうに、ゾウっていう いきものが いるんだって。もしかしたら、 あんたの なかまじゃないかしら」
 ゾウガメはむねがどきんとしました。でも、そいつは本当に僕の仲間だろうか。

   するとヒワが言いました。
 「だいじょうぶ、 あたしがたしかめてくる。 あんたは だいじな ともだちだから、 あたし がんばる」

 でもゾウガメは心の深い暗がりで、ヒワに呼びかけます。
 君はずっと一緒だっていうけど、そんなはずはない。昔友達になった小鳥は、みんな自分より先に死んでいなくなってしまった。自分を置いていなくなってしまうなら、友達などならない方がいい。

 その日からヒワは姿を見せなくなりました。最初はおしゃべりのヒワがいなくなって、自由になった気がしたゾウガメですが、だんだん落ち着かなくなって、ヒワを求めて島中を探してまわりました。崖にあがって遥か彼方の海を見つめました。


 そんなある日、ヒワを心配するゾウガメの耳に、アホウドリたちの噂話が聞こえます。
 「そういえば ヒワが うみの どこかに おちてしまったらしいよ」

 ゾウガメは胸が張り裂けそうになりました。
ヒワもまた、ゾウガメを一人置いて、もう島に戻っては来ないのでしょうか?


 誰でも孤独は嫌いなはずなのに、孤独を恐れるあまりに、自分を孤独に追いやってしまうことも、あるんですね。

 ミロコマチコさんの力強い絵が、ゾウガメの大きさ、重さ、寂しさを表しているようで、個人的にはとても好きな絵本ですが、ミロコマチコさん、どこまでが苗字で、どこからがお名前なんでしょうね。