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絵本紹介(196) 江戸のお店屋さん2015年05月21日 23:57

題名    : 江戸のお店屋さん
作     : 藤川 智子
発行所  : ほるぷ出版

 今日はいつもとちょっと違って、意外と先進都市だった江戸にはどんな店屋さんがあったのかを教えてくれる図鑑みたいな絵本です。

 最初は小間物屋さん。時代劇でよく出て来る店屋の名前ですが、実際何を売っているのか知りませんでした。この絵本によると女性の化粧品や、かんざし、髪飾りなど髪を整える道具を置いていた店です。

 言ってみれば現代のデパートの1階みたいなお店だったんですね。
 いろいろな江戸時代の美容グッズの中に、「らんびき」というポットみたいな道具が描かれています。三段重ねの構造で、一番下でお湯を沸かして、すぐ上の段の花を蒸して、一番上の容器に湯気を集めて花の香りの水を作るそうです。家庭で香水造って使っていたなんて、新鮮無添加で高級化粧品みたい。江戸の女性は(一部かもしれませんが)かなりオシャレだったんですね。

 つづいて本屋さん。絵本では版木を掘って1ページずつ刷り上げる工程が描かれていますが、中には活字印刷や写本もあったでしょう。いずれにしても本をつくる苦労は今と比べると大変なものだったことが窺われます。
 アルファベット26文字の西洋と違って、江戸のひらがなは崩し字なので、数文字単位でまとまった活字が使われていたようです。でもパターンが多すぎたりして、商用印刷では活字よりむしろ版木が重用されるようになったそうです。(版木職人さんの日当、けっこう良かったらしいです。)(平成24年4月27日 神田雑学大学定例講座NO598から)

 苦労が多くても、一度に少ししかできないし、字を読める人が少数派だった時代なので、気になるのは本の値段。1冊いったいいくらぐらいだったのか気になりますね。ちょっと立ち読みはむりだろうなぁ。

 そしてお風呂屋さん。番台、脱衣所は今の銭湯と一緒ですが、湯への入り口がかがまないと入れない石榴口。中には洗い場的なスペースがほとんどなくて、いきなり湯船です。しかも中は明かりが無くて暗かったそうです。体洗わなかったのかな?時代劇化何かで、ヌカ袋で体をこすっているシーンを見たような気がするのですが。。。いろんな風呂屋があったのかも。長屋暮らしのくまさん・はっつぁんも風呂屋に通ったのですかね?
 それから、やはり以前TVで「江戸時代、風呂屋は男女混浴が普通で、それを見た西洋人が、日本人の風紀を疑って本国にまちがった情報を伝えたので、幕府だか明治政府だかは混浴を禁止にした。」と解説していたように記憶していますが、間違いかな?

 その他、薬屋、人形屋、お菓子屋とか、行商のぼてふりが出てきたり、巻末に江戸文化の解説があったり、お子さんの勉強にも、大人の雑学にもちょっと気軽でおもしろい絵本です。

絵本紹介(195) CAPS FOR SALE2015年05月17日 17:46

題名    : CAPS FOR SALE 
A Tale of a Peddler, Some Monkeys and Their Monkey Business
作     : Esphyr Slobodkina
発行所  : Harper Collins Publishers

 1940年にアメリカで初版が発行された古典的な絵本です。絵がシンプルで色使いもレトロないい感じで、英語もそんなに難しくなさそうだったのでご紹介することにしたのですが、邦題「おさるとぼうしうり」で日本でも福音館書店さんから発行されていました。
 とりあえず英語版のご紹介ですが、やっぱ日本語じゃなきゃと言う方は福音館書店の絵本探してみて下さい。(しかも日本語版の方がずっとお安いです。)


   あるところに帽子売りのオジサンがいました。でもこのオジサン、荷物を背負って売り歩くのが嫌いで、売り物の帽子を頭にかぶって売り歩きました。

 まず自分の帽子をかぶって、その上にグレーの帽子、茶色い帽子、青い帽子を乗せて、一番上に赤い帽子、という具合です。

 オジサンは帽子が揺れて落ちないようにまっすぐに歩きながら、「帽子、ぼうし、ボウシはいかが。ひとつ50セントだよ~。」と売り歩きました。

 ある日の午前中、帽子はちっとも売れないし、昼ご飯を買うお金を持っていなかったオジサンは、町はずれの大きな木の下でちょっと休むことにしました。

 太い木の幹にゆっくりゆっくり体を預けて、頭から売り物の帽子が落ちていないことを確かめると、オジサンはウトウトと眠ってしまいました。

 しばらくして目を覚ますと、頭の上の売り物の帽子が一つもありません。
 びっくりして周りを探したオジサンは、やがて木の上でおサルがグレーや茶色や青や赤の帽子をかぶっているのを見つけます。


 オジサンはおサルに向かって、指を一本振りながら「こらこらおサルさんたち 私の帽子を返しておくれ」と言ってみたら、おサルたちもみんな指を一本振りながら、「キッ キッ キィ」。

 オジサンちょっとむかっと来て、両腕を振り上げて、「こら!サルたち! 帽子を返したまえ!」。 でもおサルたちは両手をバンザイして、「キッ、キッ、キィー」。


 それを見てオジサン、マジ切れて足を踏み鳴らして「くぉらぁ~!!くそザルどもぁ!さっさと帽子を返さんかい!」。 そしたらおサルたちも枝に両足踏ん張って、「キッ キッ キのキィ~」。

 とうとうオジサン、ブチ切れてかぶっていた自分の帽子を地面に叩き付けて「もーぉアッタマきたぁー」(と、言ったか言わないか)その場を去ろうとしました。


 すると、なんと。。。えー!!ホントにぃ?
 そして感動の結末がぁ。

 なるほどなるほど面白い。しかも今風に異訳してみると味が出ました。(良い子は真似して汚い言葉遣ったらダメですよぉ)
   こんなお話作れたら子供たちは大喜び。初版から75年、息が長い本なのがうなずけますね。
 絵本で定番の繰り返しパターンが出て来るので読み聞かせ向きだなーと思ったら、表紙の隅に"READING RAINBOW BOOK"なるマークを見つけました。きっと英語圏でも子供たちは繰り返しが大好きなんですね。

5/16 あぷりこっとつりーこぼれ話2015年05月16日 22:56

【Dogs Meet Artists】
 今日ご紹介するイラストはどんぐり人形作家のTeluさんの作品です。
 謙遜されてほんの話題作りにとおっしゃって描いて下さいましたが、一番看板犬たちを愛でていつもたっぷり遊んで下さる方なので、ワンコたちの喜んだ時の表情を知り尽くしていらっしゃる。笑っている看板犬たちをやわらかいタッチで表現して、Teluさんの気持ちが伝わってくる一枚です。 
 こんなにかわいがられて、幸せだねワンコたち。

【ファミリー去ってまたファミリー】
 今日と明日は、あぷりこっとつりー近くのデザインフェスタギャラリーさんはお休み。その影響で店の前を通る人がぐっと少なくなってしまいました。
 でも今日はすぐご近所のイベントスペースVACANTさんで、ファミリー向けイベントがあったので、あぷりこっとつりーにはいつもと違って3~4歳くらいのお子様連れのご家族のお客さまが次々にご来店下さいました。
 大人が目新しい絵本がないか探している間、お子さんたちは坂道をトコトコと歩く木製おもちゃの「どんぐりころころ」や、ネコ型の積木「ネコブロック」で楽しそうに遊んでくれました。
 看板犬の小さい方はようやく子供さんトラウマから立ち直ったみたいで、お子さんが差し出すちいさな手を優しくペロペロなめていました。

【実がついたぁ】
 店の前のまだ若い杏の木。春に花が咲いたので、上手く行けば実がつくかなぁと期待していたら、4個だけ、ウメとよく似を見つけました。
 梅とはちょっと違うのが、実に軸が無くて、枝にいきなりぼこっとついているように見えるところです。
 夏には橙色に熟れた実が収穫できますように。

【思い出の風景が...】
 竹下通りと明治通りの交差点角の昔パレフランセがあった空き地で、新しい建物の工事が冬から始まっています。
 ところがこの建物、とても大きなものの様で、明治通りから東郷神社の本殿に向けて敷設されていた車が入れる道路までつぶして工事が進められています。
 そのお蔭で、昔から残ってきた神社の石橋や駐車場周りの桜の木などが全部つぶされて、新しい建物の建築用地になってしまいました。
 幼いころ竹下通り沿いに住んでいて、裏庭から土手を登ると東郷神社だったので、石橋の下なんかでよく遊んだのですが、その思い出の景色がきれいさっぱり消されてしまいました。
 まあ、50年も時間が経てば景色が変わるのは仕方ないのかもしれませんが、やっぱり寂しいですねぇ。

絵本紹介(194) きみへのおくりもの2015年05月14日 23:56

題名    : きみへのおくりもの
作     : 刀根里衣
発行所  : NHK出版

 今日のご紹介はイタリアを拠点に売り出し中の若い絵本作家、刀根里衣さんのこの春に発行されたばかり絵本です。
 透き通るようなブルーな世界が印象的な作品です。


 たくさんの星がきらきら煌めくある夜、湖に浮かぶキラキラしたものをプレゼントしたくて、クロは大好きなシロを散歩に誘いました。


 クロはキラキラしたものを手でつかもうとしました。
 でもつかめたのは葉っぱ。

 クロは今度はシャベルですくってみましたが、すくえたのは貝殻でした。


 湖に浮かぶキラキラしたものをシロにあげたい一心で、クロはバケツや釣竿や網を使ってキラキラを捕まえようとしましたが、獲れて来たのはクラゲやさかなやタコで、キラキラはつかまりません。


 クロはとうとう冷たい湖の水に飛び込みましたが、水の中は暗くて深くて何も見えません。

おまけにクロが水に潜っている間に雲が空を覆って、湖のキラキラは消えてしまいました。

 クロはこのままシロにキラキラきれいに輝くものをあげられないのでしょうか?

 バレンタイン向けに描かれた絵本だそうです。確かに全頁隙間なく透明感のある絵が描かれていて、とてもおしゃれな絵本です。大好きなシロの為に、無我夢中で突き進むクロの姿は、一途な青年の姿と重なって微笑ましいお話です。ちょっと名作の「しろいうさぎとくろいうさぎ」を連想させますが、新しい結婚のお祝いに使えるかも。

 そういえば、確かに好きな人に素敵な物をささげたい!喜ばせたい!と強く願った日が、あったようななかったような。。。相手はUshiさんだったような違ったような。。。
   何を言っているんですか!Ushiさん以外あり得ません。誓って。

絵本紹介(193) かあさんのいす2015年05月10日 17:31

題名    : かあさんのいす
作     : ベラ B. ウィリアムズ
訳     : 佐野洋子
発行所  : あかね書房

 今日は母の日にちなんで、ちいさな女の子が一生懸命働く母親がくつろげる椅子を買うお話です。


 主人公の女の子は、お母さんとお婆さんと3人でアパートで暮らしています。
 お母さんはブルータイルレストランでウェイトレスをして働いて生活を支えています。

 3人がそのアパートに引っ越してきたのは1年くらい前。前に住んでいた家が火事になって、灰と燃えカスだけを残して、なにもかも失くしてしまったからでした。


 家具も、食器も、服も待たない3人に、近所の人たちや友人は様々な物を分け与えてくれました。
 テーブルに椅子に、絨毯に、ベッド。赤と白の縞模様のカーテンに鍋やスプーンやお皿、それにぬいぐるみ。

   けれども、まだ大きな椅子もソファーも無くて、お母さんは仕事から帰ってきて「足が痛くても休ませる場所すらないんだから」と嘆きます。


 女の子はお母さんにやわらかい椅子を買ってあげたくて、ブルータイルレストランでお手伝いをして貰ったコインを大きなビンに貯め始まました。

 女の子はびんがいっぱいになったら、すごくふわふわで、すごくきれいで、すごく大きい椅子を買いに行くつもりです。そしてその椅子はバラの模様がついたビロードをかぶっていなければなりません。

 お婆ちゃんも安売り買い物ができた時は、得をした分をビンに入れてくれました。
 お母さんもお客さんからチップをたくさんもらえた時には、ビンにお金を入れてくれました。

 ある日、サンディおじさんから貰った25セントをビンにいれたら、ビンはとうとういっぱいになりました。

 溜まったコインを銀行で10ドル紙幣に換えて貰って、女の子とお母さんとお婆さんの三人は、バスに乗って街に出かけました。

   4軒の家具屋さんを回っていろいろな椅子に座って試してみました。  そして、とうとう夢にまでみた椅子を見つけたのです。

 椅子はビンの中のお金で買えました。

 家に届いた椅子は、赤と白のカーテンがかかっている窓のそばに運び込まれて、女の子とお母さんとお婆ちゃんと3人で座って記念写真を撮って貰いました。


 お婆ちゃんは昼間じゅう椅子に座って近所の人と話をしています。お母さんは仕事から帰ってくると椅子に座ってテレビのニュースを見ます。女の子もご飯が終わるとお母さんと一緒に椅子に座りますが、座っているうちに眠ってしまいます。
 すると、お母さんはそーっと電気を消しました。

 決して豊かではない、どちらかと言うと暮らし向きの厳しい家族三人の暮らしですが、ご近所や友人の親切に助けられたり、三人で力をあわせたり、とうとう夢の椅子を手に入れたり、幸せは必ずしもお金持ちかどうかだけでは決まらないものですね。
 それにしても、けなげな子だなぁー。