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絵本紹介(183) でっこりぼっこり2015年04月02日 23:35

題名    : でっこりぼっこり
作     : 高畠 那生
発行所  : 絵本館

 「光あるところに影がある。」 子供の頃大好きだったアニメ「サスケ」の始まりのフレーズです。今日ご紹介する絵本は「でっこりあるところにぼっこりがある」とでも言いますか、徹底的にナンセンスなユーモア絵本です。


 たぶんアフリカのサバンナに、変な形をした台地が見えます。
 たぶんクロヒョウと思える眼鏡をかけた変な動物が、台地を指さして「これはきょだいじんのあしあとなのです」と物知り顔に解説しますが、ん?足跡がなんで盛り上がっているんだ?


 答えは、ある日きょだいじんがマラソンを始めたところ、きょだいじんの足が地面に着く度に地面が足の形にへこんで、反動で地球の裏側で、足跡のでっぱりができたのでした。

 つまり、どこかがぼっこりへこめば、どこかがでっこりでっぱるという理屈です。

 きょだいじんの足型にへこんだ穴は、水を張ってプールにしたり、5本の指の跡を個室にした公共トイレにしたり、ニワトリを飼ったり、いろいろな使い道があって重宝です。

 ところが、あれっ、地球の裏側まで走ってきたきょだいじんが、こんどはぼっこりでっぱった足跡の上を踏んづけて、足跡を元通りに直しながら駆けて行きます。

 これで出っ張ったでっこりもへこんだぼっこりもどちらも元通りになってめでたしめでたし。。。と行きたいところですが。
 プールやトイレや養鶏場に使っていた人たちは大慌て。
 水は溢れて流されるし、ニワトリは囲いが無くなって好き勝手な方角に逃げて行きました。


 おっと、ここできょだいじんがつまずいて頭から地面にめり込んでしまいました。
 きょだいじんの顔の形にぼっこりができた。。。と、いうことは、どこかにきょだいじんの顔の形のでっこりが。。。

   地図上には巨人の足跡伝説のある湖水を時々見かけますが、この絵本の様に、足跡でへこむ分地球の反対側では出っ張っているはずだというというアイデアは、とても斬新な発想ですね。

もしかすると。。。2015年04月01日 23:47

 5年ほど前から重い記憶の障害が出て、自立した生活が難しくなった私の母。

 母の記憶障害に気づいた時に、数か所の認知症外来を訪ねて記憶テスト、頭部CT、頭部MRIなど検査を受けましたが、どの検査も年齢相応の劣化以外に異常が見つからず、認知症との診断は下されませんでした。

 でも少し前のことを完全に忘れてしまう(例えば、海外旅行から帰って2週間で、旅行に行ったことを全く忘れてしまいました)し、情緒不安定でちょっとしたことで激昂したり、泣き出したり。報道や書物で見聞きするアルツハイマー病をはじめとする認知症の症状とそっくりでしたので、きっと診断のつかないタイプの認知症なのだろうと考えてきました。
 
 ただ、記憶障害が見つかって5年。アルツハイマー病の場合、早い遅いはあっても病状が進行して、5年も経てば寝たきりになったりするらしいのですが、母の場合は体力は落ちましたが、知性は5年前とあまり変わりません。

 おかしいな、やはりアルツハイマーとは違うけど、ではどんな原因の認知症なのだろうと考えていた頃、突然気絶して転倒したり、泡を吹いて痙攣したりという突発的な症状が出るようになってきました。

 泡を吹いて痙攣すると言えば、良く知られている病気は癲癇。
 そこで癲癇について調べてみたら、失神などの大きな発作以外にも普段見かけた何気ない様子が、実は癲癇の説明に挙げられた症状とそっくりでした。
 そして何より、老人性の癲癇は発作が起きていることが分かりにくく、発作の後はしばしば記憶障害を伴うと書かれていたのです。
 
 確か、人は経験したことを神経細胞同志で回路を作って記憶すると言われていますが、回路がちゃんと出来上がる前に癲癇の嵐に襲われたら、せっかく出来そうだった回路はリセットされて、記憶もすっかり消え去ってしまうでしょう。

 それで、今年初めから母の主治医に頼んで抗癲癇薬を処方してみて貰いました。
 すると、どうやら記憶障害に効いていそうなんです。
 
 最近、会話は普通にかみ合うようになりましたし、よくTVを見るようになって、少し前にニュースで取り上げられていた話題をよく覚えています。感情の起伏もほとんどなくなったように見えます。

 これはもしかすると。。。
 まだ本物かどうかわかりませんが、もしかすると癲癇の治療が、記憶障害を改善してくれる場合があるのかもしれません。どうか本物であって欲しい。

 自分の記憶障害を自覚して悲しんで来た母。
 気が付くのが遅れてゴメンネと心の中で謝りながら、どうぞ少しでも母から不安が取り除かれて行きますようにと祈っています。

新年度2015年03月31日 23:59

 この間お正月を迎えたと思ったのに、もう年度末。1年の1/4が過ぎてしまいました。

 明日から新年度。周囲に新しい学年、新しい学校、社会人の第一歩を踏みだす身内がいる方も多いことと思いますが、自分も含めてそんな方たちに届くかわからないけどメッセージを。

 思い返せば31年前、私にも初々しい新入社員の頃がありました。(本当よ。)

 最初にお世話になった会社は幸運にも新入社員教育に力を入れていた会社で、最初の1か月は合宿所に籠って座学と職場見学中心の知識教育(眠かったぁ)、次に5か月間の出身地から遠く離れた支店で販売前線に放り込まれ(心細かったぁ)、最後の半年は製造現場に入っての実践教育と(つまらなかったぁ)、1年間もかけてゆっくりと会社全体のシステムを学ばせてくれました。

 今はなかなかそんなのんびりと新人を育ててくれる会社は少ないかもしれません。恵まれた時代でした。

 2年目から希望していた職場勤務になれたのですが、結果的にいつも販売の前線の空気や製造現場のきつさを忘れることなく仕事ができましたし、研修期間にサラリーマンの大概の職場を経験していたので、その後の何度かの転職もあまり恐れることなく飛び込めました。その後も物事を考えるとき、あの時の多様な経験はいつもヒントを与えてくれて、とても役に立ちました。
 
 店を始める時も、新人研修で日曜日毎にスーパーに派遣されて、試食販売をさせられていたので(ネクタイ締めたどでかい二ーちゃんが大声はりあげても、気色悪がって誰も近づいてきてはくれませんでしたが。。。)、接客にほとんど不安を持たずに踏み出すことができました。

 でも新人研修渦中の1年は、なんですぐに専門の部署に配属しないで、こんな無駄で為にならないことをやらせているのか?と会社を恨んだこともありました。若い時は目の前しか見えず、大局的に物事を理解できなかったのですね。

 そんな経験から、若い人たちに目先のかっこよいとか悪いとか、得とか損とか、そんなものにとらわれずにひろく様々な経験を積んで欲しいなと心から思います。
 ただし昨今は人の善意につけ込んで、どこまでも労働を搾取しようとする輩が多くて困ったものです。あきらかなブラック企業ばかりでなく、名前の通った一流企業でも非正規社員に対しては平気でひどいことをしたりするようです。
 ある程度の苦労は喜んで体験すれば良いですが、理不尽な扱いにははっきりNOを突きつけられるよう、誇りを失わずにいましょう。

 汗をかいた分、確実に実力は付いて行く。焦らず恐れず一歩ずつ、ですね。

お花見2015年03月30日 23:44

 今日は春風に誘われて、ワンコたちを連れて代々木公園までお花見に出かけてきました。

 昼間は半袖Tシャツで歩きたいくらい暖かだったので、桜は一気に満開で見ごたえがありました。

 渋谷方面への歩道橋付近や中央広場には、平日でもたくさんの人がシートを敷いて飲んだり食べたり。日本の春の風景ですね~。
 しかし意外に外国人がたくさん。皆さんきれいな桜を見に来ているようですが、お花見をしている日本人ももの珍しいみたいで、あっちきょろきょろ、こっちきょろきょろでした。


 うちのワンコたちは花より団子。持ってきたササミジャーキーが気になって気になって。
 本当は芝生の上で思いっきり駆け回らせてやりたいけど、これだけ混んでいるとリード離すわけにいかないものね。

 
でも広い公園のお散歩、気持ちよかったね。
 明日は、もうちょっと静かな公園に行ってみますか。

絵本紹介(182) そっといちどだけ2015年03月29日 18:00

題名   : そっといちどだけ
作     : なりゆき わかこ
絵     : いりやま さとし
発行所  : ポプラ社

 今日ご紹介する本は、人の為に働く犬、盲導犬のお話しです。物語も、絵も、久しぶりに涙腺直撃の素敵な絵本でした。

 星降るよるに生まれたラブラドール犬の子犬は、ステラという名前を貰います。
 ステラは人に愛されながらすくすく育って、盲導犬としての訓練を修了した2歳の春の日、視覚障害を持つあかねさんと出会いました。

 ステラと初めて会ったあかねさんは、両手でステラのほおをはさんで、「きょうからよろしくね」とやさしくささやいてくれました。


 あかねさんとステラの間は、最初の数か月はぎこちなく過ぎますが、だんだんあかねさんはステラを信じて身を任せるようになりました。  ステラにはそれがうれしくて、しっぽを大きく揺らしました。

 ステラがあかねさんに曲がり角や階段の場所を教えるたびに、あかねさんは「グーッド、ステラ!」と大声でほめてくれて、ステラはその声をきくと幸せでいっぱいになりました。

 夜、あかねさんのベッドの下で、あかねさんのかすかな寝息を聞きながら眠る目を閉じる時が、だいすきな人を一日守り通した充実感に満たされて、ステラには一番幸せなひと時でした。

 秋の帰り道では、あかねさんが「ステラとあるくと、季節を感じることができるわ。夕焼けがきれいでしょう?」と尋ねたので、「きれいよ」と尻尾で応えました。それからは帰り道をゆっくり歩いて、まいにち夕暮れを楽しむ、ふたりの一番好きなひと時になりました。


 そうして季節がいくつも繰り返されて、ステラが10歳になった春のころ、ステラはときどきミスをするようになりました。曲がり角を知らせ忘れたり、階段の前で止まらなかったり。
 そんなときあかねさんはいつも「ドンマイ、ステラ!」と励ましてくれましたが、盲導犬の訓練士さんからは、そろそろ引退の歳と言われてしまいました。でもあかねさんもステラもお互いに離れたくありませんでした。


 それからもステラはミスしないようにと焦れば焦るほど間違いを繰り返して、あかねさんの「ドンマイ」の声はだんだん小さくなります。  ある夜、ステラはトイレでない場所でそそうをしてしまい、あかねさんはステラを抱きしめて泣きました。

 朝から小雪がちらつく冬の日、家の前にバンが停まって、訓練士さんの声がしました。
 「ステラ、むかえにきたよ」
 あかねさんは家の中で震えています。その震えがステラに今日がお別れの日であることを知らせました。



   だめです。
 こうしてご紹介のためストーリーを要約していても涙腺が。。。

 ずっと家族の様に一緒に過ごして来たあかねさんとステラ。ふたりとも別れたくなんかなかったのですが、最後にはステラはあかねさんを守るため、あかねさんはステラを守るため、お互いに別れることを決意します。
 物語は二人の別れの後もまだ少し続きます。そして老後を心静かに暮らすステラが、たった一つあかねさんにお願いすること、そのクライマックスでもう涙で文字が見えなくなりました。

   おじさんは決して人前で読んではいけない絵本です。