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黒いウシ2013年07月11日 20:14

 今から15年くらい前の秋のことです。
 
 夕食を終えて居間でほっと一息の私とUshiさん。今日も一日お疲れの彼女は、つい食卓の椅子でウトウトとし始めました。
 ほんの数秒、眠りに落ちたかと思うと、いきなり「ガ!!」といういびきとともにびっくりしたように跳ね起きて、「ウシだ。」とつぶやきました。

 「へっ? なんのこと?」と私。
 「今一瞬、大きな黒いウシの顔が現れた。。。」とUshiさん。

 その時は、なんだそれー、変なのーで終わって、すっかり忘れていました。

 それから数日後、私たち家族は初めての沖縄旅行で石垣島底地ビーチにいました。
 秋なのに真夏のような日差しと白い浜、エメラルドグリーンの美しい海。はしゃいだ子供たちは、海でプールでさんざん遊んでお昼寝に落ちました。
 
 せっかくの南の島、じっとしていたらもったいないので、私とUshiさんはそっと部屋を抜け出し、ホテルの自転車を借りて、目指しました有名な景勝地川平湾。
 その途中、サトウキビ畑が途切れたところに小さな水田があって、そこに一頭の立派な角をした水牛がつながれているのを発見。

 「おー水牛だ」と喜んで写真を撮る私の後ろで、
 「あっ、この子だ。」とUshiさん。
 「この子だ、私の夢に出てきたの!」

 なんとも不思議な話ですが、どうやらUshiさんはウシさんのデジャブを見てしまったようなのでした。
それが運命だったのか前世の因縁なのか、それから私たちは何度か石垣島を訪ねることになります。

 そして、本当は今頃石垣島にいて、Ushiさん100本目のダイビングに挑んでいるはずだったんですが、台風とぶつかっちゃいました。
 ですので、今回の石垣島行は断腸の思いで中止。
 今週末13日(土)、14(日)も営業することになりましたので、良かったら遊びに来てください。

 それにしても、前に話題にした遺伝子検査をやってみたら、実はUshiさんの8代先祖は水牛だった!というオチが付いたらサイコーの話なんですけど、やってみる気ない?Ushiさん。

蝉と梅雨明け2013年07月12日 19:40

 今年ははずれてしまいました。

 東京では蝉の鳴き声を初めて聞いた日が梅雨明け、という自然のサインの話です。

 中学校の理科の教師から教わってから、いつもこの季節注意してきたのですが、東京で暮らしていた期間は、憶えている限り100%的中してきたと思います。

 ある年は蝉の声を聞いたのに梅雨明け宣言がされずに、あー狂うこともあるんだと思っていたら、それから3日後に、梅雨は3日前に開けていましたと発表されたり、ある年は先に梅雨明けのニュースを聞いた日、午後に蝉の声を聞いたり、まさにどんぴしゃりでした。

 それが、今年は我が家のあたりではまだ蝉の声聞いていません。

 もう東京の上空は太平洋高気圧に占領されて、猛暑日が4日も続いているので、確かに梅雨は明けたのでしょう。それなのになぜ蝉は出てきてくれないのか?

 思い当ることとしては、去年の蝉の大発生です。

 我が家のあたりだけだったのかもしれませんが、昨年は近くの公園で、夕方道路を歩く蝉の幼虫を、踏みつぶされないようにと何匹脇の木に避難させたことか。たぶん20匹以上だったと思います。
 そして、太い木の根元は蝉が出てきた穴ぼこだらけで、木の幹にも上に急ぐ幼虫の行列ができていました。
 
 生物の一般論として、大発生した年の翌年は発生する数がめっきり減る場合が多いようです。我が家の近所の蝉は、きっと7年ごとにブームのピークがやって来る周期を刻んでいるのかもしれません。

 あと6年後、去年の蝉の子供たちと出会う自分は、健康で楽しく暮らせているのかしら。そんなことを思いながら、すでに夏バテ気味で、今年の夏は手ごわそうです。

 (書いていてる途中で、蝉の声聞きました!やっぱり梅雨明けはこうでなくちゃ)

絵本紹介(13)2013年07月13日 15:20

  題名  : とっときのとっかえっこ
  文    : サリー ウィットマン
  絵    : カレン ガンダーシーマー
  訳    : 谷川俊太郎
  出版社 : 童話館出版

  今日の絵本は、人と人の付き合いはこうありたいなと、ほっとして、懐かしくて、憧れるお話です。

 一人暮らしのバーソロミューおじいさんは、お隣の家のネリーという女の子を、赤ん坊の時からをとてもかわいがってきました。
 
 ネリーが赤ちゃんだった時には毎日ベビーカーに乗せて、ご近所の畑まで散歩に連れていきました。
 ネリーが歩き始めると、多少危なっかしいことには目をつぶって、ネリーの好きなように歩かせました。でもいつもそばでネリーを見守って、いざというときは手を貸しました。
 近所の人が二人をみかけると、「ハムエッグ」と呼ぶくらい、二人はいつも一緒に散歩をしたり、遊んだりしていました。

 でもネリーが大きくなるにしたがって、バーソロミューさんは歳をとって、杖をたよりにするようになります。

 ネリーが学校に上がると、バーソロミューさんはもっと歳をとりました。ときどき危なっかしいときがありましたが、そんな時でもネリーは、バーソロミューさんが嫌がらないように、いざというときだけ手をかしました。
 ある日一人で出かけて階段で転んだバーソロミューさんは、しばらく入院して、車いすで帰ってきました。

 「これでさんぽはおしまいだな。」とさびしくつぶやくバーソロミューさんに、ネリーは「わたしがつれてってあげるもん。」とやさしく強く答えます。

 そう、昔はバーソロミューさんがネリーのベビーカーを押して、今度はネリーがバーソロミューさんの車いすを押して、ふたりはとっかえっこをしたのでした。


 このお話は、お隣どうしだから、わかちあう。大好きだから歳の違いなんか関係なく、大切な友達になる。大切な友達だから、気づかい助け合う。
 多分昔の人たちが当たり前にしてきた人と人の関わりを、さらりと描いています。お互い様の気持ちで、自然に助け助けられて、結果として支え合う姿がとても素敵です。

 今は残念ながらよそ様のお子さんに話しかけたら、親御さんがすっ飛んでくるような緊張した世の中ですので、バーソロミューさんとネリーのような関係は望めません。実際、人の善意を悪用した悲しい事件が後を絶ちませんので、残念ですが仕方ないことかもしれません。
 
 いつか金、金、金の夢から覚めて、また昔のご近所さんどうしのように信頼し合える世の中が、戻って来て欲しいですね。

 余談ですが、犬を飼ってみて得したなと思う瞬間があります。道行く見ず知らずの人と、犬をきっかけにお話しできたとき。近所のお子さんやお子さん連れの方と、やはり犬を介して顔見知りになれたとき。

 きっとみんな本当は警戒を解いて人とつながりたいんですよね。
 犬には不思議と人の警戒をやわらげてくれる能力が、あるみたいです。

絵本紹介(14)2013年07月14日 15:18

 題名   : なみにきをつけて、シャーリー
 文     : ジョン バーニンガム
 絵     : ジョン バーニンガム
 訳     : 辺見まさなお

 ジョン バーニンガムの絵本としては、以前「ねえ、どれがいい」をご紹介しているので、2冊目になります。 私としては「ねえ、どれがいい」と甲乙つけがたく好きな作品です。

 中年の夫婦と、小学生くらいの女の子、それに犬が一匹、海岸へとピクニックにやってきます。

 女の子の名前はシャーリー。
 さっそくお母さんが「みずがつめたくて とてもおよげないわよ、シャーリー」と注意の言葉を投げかけます。

 浜辺にデッキチェアーを置いてくつろぐ夫婦。
 シャーリーは犬と一緒に、浜辺に向かいます。と、そこには置き忘れられたようにたたずむ一艘の古い手漕ぎのボートが。

 デッキチェアーに陣取ったお母さんから、ときどき、どうでもよい注意の言葉がシャーリーに投げられます。
 「あたらしいくつを きたないタールでよごしちゃだめよ。」とか、
 「いしをなげちゃだめよ だれかにあたったらたいへんでしょ。」とか。

 でも、ボートを見つけたシャーリーは素敵な空想の世界を旅していて、おかあさんのくだらない注意なんかちっとも届いていません。

 だって、ボートで犬と沖に漕ぎ出したシャーリーは、海賊船につかまってしまいます。一度は絶体絶命のピンチを迎えますが、犬の機転で難を逃れて、海賊から宝物の隠し場所の地図を奪って脱出。
 地図を頼りに海を渡るシャーリー。やがて無人島をみつけて、宝物を掘り出します。
 宝物の王冠をかぶって海賊の王様になったシャーリー。子分の犬を従えて、夜の海を行きます。

 ここでデッキチェアーのおかあさんの叫び声が。
 「まあ たいへん、こんなじかん!」

 空想の世界から現実に引き戻されるシャーリーですが、でも大丈夫。
 シャーリーの頭の中には、まだまだ果てのない物語が詰まっているのですから。

 
 この絵本は子供のどこまでも自由な想像力と、大人のつまらない現実の対比がとても面白い本です。
 どのページも左側はデッキチェアーからくどくどくだらない言葉を投げかける両親の姿を、右側は素敵な冒険をするシャーリーの姿を描いています。
 
 この本を開くといつも、大人ってなんてつまらなくてくだらないんだろう、嫌になってしまいます。
 子供のやっていることの方に共感を覚える、ということはまだ心は柔らか?

進めマクドナルド2013年07月15日 15:05

 この前、苦い東中野の冒険を思い出していて、そういえばと蘇ってきたM-サンがらみの、またおバカな記憶です。

 巷ではブルース・リーの燃えよドラゴンが大ヒットして、私は手製のヌンチャクを振り回して、後頭部にたんこぶをこしらえていた頃、40年近く前の話です。

 少し前に銀座にマクドナルド1号店が上陸して、新宿とか表参道とか、身近にもお店ができ始めていました。
 どこかで聞いたことある方も多いかもしれませんが、当時、値段の安さからか、マクドナルドのハンバーグは猫肉だ!とまことしやかな噂が流れていました。

 ある日クラスのあるおバカが、
 「先輩から聞いたんだけどさー」 「先輩の友達が、新宿のマクドナルドの裏で、店員が猫捕まえるところ見ちゃったんだって。」「そしたら、人に黙っててくれって、10万円くれたんだって。」
 という、耳寄りな情報を持ち込みました。

 今や、友達の友達がさー、とか、先輩が友達から聞いたらしいんだけどー、というのは「はい、その話はデマです。」と告白しているようなものですが、当時とても純真(= 空っぽ)な私たちは、頭から信じ込み、すでに10万円貰ったように歓喜しました。

 それで、前にも登場した何事にも熱くまっすぐなM-サン提案で、我々もマックの裏で張り込んで、動かぬ証拠を捕まえよう!ということになりました。
(この時も3人だったように思うんですが、あと一人が誰だったか。。?)

 放課後、M-サンが家からポラロイドカメラを持ってきて(写したその場で証拠を突きつけられる。ワルやなー。)、当時表参道にあったマックに向かいました。

 ところが。。。

 裏口が、ない! 

 と、言うか、どうやったらマックの入ったビルの裏に回れるのか、入り口が見つからなかったんです。
 
 で、しばらく店の表に立って、店員が猫捕まえるの待ったのですが、その辺に猫いないし、当時もそれなりに人通りあったし、誰が真昼間に天下の表参道で、こそこそ猫を捕まえるものですか。

 あー、新宿に行けば良かったねーと嘆きながら、10万円貰うぞ!と弾んだ気持ちをどこに落とせばいい?

 そこで、すばらしい名案。近くの善光寺の墓地で心霊写真を撮ろう!と目的を変更して、お墓でめくらめっぽうポラロイドパシャパシャ撮りました。

 でも、ただでさえ青山通りと表参道に近くて、明るい善光寺の墓地に、真昼間に出てきてくれる、勤勉なオバケさんはいらっしゃらなかったようで、ただ他人の家の墓石が映ったポラロイドの山ができていきました。

 フィルム、結構高かったはずなんですけどね。

 表参道ヒルズなんてまだ影も形もなくて、同潤会アパートが現役で頑張っていた、のんびりしていた頃のお話でした。