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絵本紹介(16)2013年07月21日 11:00

題名   : アンナの赤いオーバー
 文     : ハリエット ジィーフェルト
 絵     : アニタ ローベル
 訳     : 松川真弓
 出版社  : 評論社

 今回ご紹介する本は実話に基づくお話だそうです。とてもしなやかでたくましい、庶民の暮らしがいとおしい素敵なお話です。

 ヨーロッパのある街で、去年の冬、アンナの小さくなったオーバーを見て、「戦争がおわったら、あたらしいオーバーを買ってあげようね。」
と、お母さんが約束してくれました。

 でも、戦争が終わっても、お店はからっぽ。誰もお金を持っていませんでした。

 困ったお母さんは考えました。
 うちにはおじいさんの金時計とか、すてきな物がいろいろあるから、きっと何とかできる。

 お母さんはまずお百姓さんに、羊の毛と金時計を取り換えて欲しいと頼みます。お百姓さんは、すぐに引き受けてくれて、次の春に羊の毛がのびたら刈り取って分けてくれることになりました。

 農家さんに分けてもらった羊の毛は、糸紡ぎのおばさんにはランプをあげて毛糸に紡いでもらい、夏にはコケモモの実で毛糸を素敵な赤色に染めました。

 そして、機織り屋さん、仕立て屋さんにも素敵な品物をお礼にあげて、ようやくクリスマス前にかわいらしいアンナの赤いオーバーが出来上がります。

 アンナとお母さんは、オーバーができるまでかかわってくれた人たちを招待して、ささやかなクリスマスパーティーを開きます。


 何もないところから、知恵と人付き合いで、娘の為に素敵なオーバーを作り上げてしまったお母さんのたくましさ。
 オーバーの材料作りから、その作業にかかわった人たちと交流しながら、母の愛情がたっぷり織り込まれたオーバーに袖を通すことができたアンナ。
 本当に人のぬくもりを感じさせてくれる物語です。

 それと、農家のおじさん、糸紡ぎのおばあさん、機織りのおねえさん、仕立て屋のおじさん、どの人もみんな勤勉で実直で、困ってる人の足元見てがめつく儲けようなんて人、ひとりもいません。
 こういうお付き合いのグローバル化なら大賛成なのですが。。。
 
 誰かが素敵なフリースを信じられないくらい安く買える裏に、貧しい国の人が、おかしいなと思いながら、仕方なくただ働きに近い条件をのんでるとかいう事情が無いような世の中に、していきたいですね。