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絵本紹介(13)2013年07月13日 15:20

  題名  : とっときのとっかえっこ
  文    : サリー ウィットマン
  絵    : カレン ガンダーシーマー
  訳    : 谷川俊太郎
  出版社 : 童話館出版

  今日の絵本は、人と人の付き合いはこうありたいなと、ほっとして、懐かしくて、憧れるお話です。

 一人暮らしのバーソロミューおじいさんは、お隣の家のネリーという女の子を、赤ん坊の時からをとてもかわいがってきました。
 
 ネリーが赤ちゃんだった時には毎日ベビーカーに乗せて、ご近所の畑まで散歩に連れていきました。
 ネリーが歩き始めると、多少危なっかしいことには目をつぶって、ネリーの好きなように歩かせました。でもいつもそばでネリーを見守って、いざというときは手を貸しました。
 近所の人が二人をみかけると、「ハムエッグ」と呼ぶくらい、二人はいつも一緒に散歩をしたり、遊んだりしていました。

 でもネリーが大きくなるにしたがって、バーソロミューさんは歳をとって、杖をたよりにするようになります。

 ネリーが学校に上がると、バーソロミューさんはもっと歳をとりました。ときどき危なっかしいときがありましたが、そんな時でもネリーは、バーソロミューさんが嫌がらないように、いざというときだけ手をかしました。
 ある日一人で出かけて階段で転んだバーソロミューさんは、しばらく入院して、車いすで帰ってきました。

 「これでさんぽはおしまいだな。」とさびしくつぶやくバーソロミューさんに、ネリーは「わたしがつれてってあげるもん。」とやさしく強く答えます。

 そう、昔はバーソロミューさんがネリーのベビーカーを押して、今度はネリーがバーソロミューさんの車いすを押して、ふたりはとっかえっこをしたのでした。


 このお話は、お隣どうしだから、わかちあう。大好きだから歳の違いなんか関係なく、大切な友達になる。大切な友達だから、気づかい助け合う。
 多分昔の人たちが当たり前にしてきた人と人の関わりを、さらりと描いています。お互い様の気持ちで、自然に助け助けられて、結果として支え合う姿がとても素敵です。

 今は残念ながらよそ様のお子さんに話しかけたら、親御さんがすっ飛んでくるような緊張した世の中ですので、バーソロミューさんとネリーのような関係は望めません。実際、人の善意を悪用した悲しい事件が後を絶ちませんので、残念ですが仕方ないことかもしれません。
 
 いつか金、金、金の夢から覚めて、また昔のご近所さんどうしのように信頼し合える世の中が、戻って来て欲しいですね。

 余談ですが、犬を飼ってみて得したなと思う瞬間があります。道行く見ず知らずの人と、犬をきっかけにお話しできたとき。近所のお子さんやお子さん連れの方と、やはり犬を介して顔見知りになれたとき。

 きっとみんな本当は警戒を解いて人とつながりたいんですよね。
 犬には不思議と人の警戒をやわらげてくれる能力が、あるみたいです。