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実験に失敗はつきもの2015年11月20日 23:59

  先週パリで起きたテロ事件。首謀者はシリア帰りのベルギー人だったと報道されています。
 そしてその首謀者がシリアからEU圏に入国して、ベルギーやフランスに潜伏していたことが把握できていなかったことが問題視されています。

 EUでは通貨統合と、シェンゲン条約という取り決めで、互いの国の往来に入出国審査(パスポート等のチェック)を課さない壮大な実験が行われています。
 今回のテロ首謀者の動向把握をできなかった背景に、こうしたEU圏内移動の緩さと各国間の行政の連携の悪さがあったのではと指摘されているようです。

 外国からEUを訪れる私たちにとって、違う国なのに通貨は同じで往来が自由なのはとても便利で素晴らしいことと未来を感じたのですが、今回はその自由が裏目に出てしまったようです。

 でも、だからと言ってせっかくのEUの壮大な実験を、後戻りさせないで欲しいものです。EUの制度はたぶん将来人類が向かうべき世界のあり方のひとつかもしれません。

 歴史的、文化的な背景を持った国は存続していても、経済活動は国家を超えて地域や世界を単位として行われて、人は出身と関係なくどこの国に住むことも、住民票を移すように気に入った国に気軽に国籍を移すこともできる。。。 民族のアイデンティティーを保ちたければ盆暮の里帰りみたいに時に故国に集いまた世界に散っていく。国の役割は人が安心して暮らせる仕組みづくりやその土地の文化の継承だけ。領土問題も宗教対立も発生しない。
 情報も物流も進化した時代には、人類はそんな生き方も夢ではないかもしれません。
 
 人の流動が柔軟になれば、国同士の諍いが戦争へと発展しづらくなりそうですし、悪政を続ける国からは人は逃げ出してやがて成り立たなくなるかもと期待もできます。

 EUの壮大な実験は国の間の経済格差の面でまだ発展途上ではありますが、長い間戦争に明け暮れて疲弊したヨーロッパの反省から生まれた知恵だと思います。

 今回のテロの遠因にはEUの脆弱性も含まれるのかもしれませんが、実験に失敗はつきもの。是非前に進む道を選んで欲しいなと願います。