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絵本紹介(275) The best Christmas present in the world2016年05月15日 23:42

題名  : The best Christmas present in the world
文   : Michel Morpurgo
絵   : Michel Foreman
発行所: Egmont Press

 今日は「世界で一番の贈り物」という題名で翻訳されている絵本のご紹介です。題名を直訳すると世界で一番のクリスマスプレゼントですが、ちょっと悲しい内容なので、訳者の方はクリスマスプレゼントでは<軽いと思って贈り物なのかもしれません。第一次世界大戦中に本当にあった実話に基づくお話です。

 ”私”はバードポートの街のガラクタ屋で、古いロールトップデスク(蛇腹巻き上げ式デスク)を見つけました。そのデスクはひどい状態でしたが、何年か前から探していたアンティークなので、喜んで買って帰りました。

 家に帰ってそのガラクタデスクを修理しようとしていて、”私”は隠し引き出しの中から、”ジム最後の手紙、1915年1月25日届く。私が死んだら一緒に埋めて下さい。”と書かれた紙が貼られた鉛の缶を見つけて、中からドーセット州バードポート市のミセス ジム=マクファーソン(ジム=マクファーソンの奥さん)に宛てた手紙を見つけました。


 その手紙は戦場のジム=マクファーソンから妻のコニーに、その年のクリスマスに起こった奇跡の様子を書いて送ったものでした。

 手紙によると、ジムの隊が緩衝地帯を挟んでドイツ兵と対峙していたクリスマスの晩、ドイツ側の塹壕で白旗が振られて、あるドイツ兵が「ハッピークリスマス!一緒にやらないかい?」と叫びながら、塹壕から緩衝地帯に歩き出てきました。その手にはお酒の瓶が。
 そのドイツ兵に呼応するようにイギリス兵たちも塹壕から緩衝地帯に出てゆきました。そして、そこここでドイツ兵とイギリス兵が歩み寄り、やがてお酒や食べ物で一緒にクリスマスを祝い始めます。


 将校のジムも、相手の将校のハンスと出会い、互いの身の上を話しながら楽しい時を過ごしました。

   兵隊たちはやがてイギリスチームとドイツチームに分かれてサッカーの試合をしました。ドイツ人将校のハンスはジムに向かって、「これがこの戦争を終わらせる方法だと思わないかい?」「サッカーなら誰の子供も孤児にならないし、誰の奥さんも未亡人にならないで済む。」とつぶやきます。

 ジムは手紙の最後でコニーに「兵隊の誰もが平和を待ち望んでいるから、僕はもうすぐ君の元に帰れるよ。」と伝えました。

 ”私”は気付きます。これがジムの最後の手紙という事は、ジムはコニーの元に帰って来られなかったのだと。
”私”はコニーを探し出して手紙を届けることにしました。

 住所を手掛かりにコニーを探して、”私”は老人ホームでひっそりと暮らす101歳になったコニーを見つけ出すことができました。


 すっかり表情をなくしてしまったコニーですが、”私”がジムの手紙をみせると、コニーの眼に光が戻って。。。。

第一次世界大戦の時、本当にあったお話しらしいです。
 戦争は、どんな戦争でもむごく無意味なものだと思いますが、この時代の戦争には”まだ”人間性が残っていたようです。
 殺し合いではなく、サッカーで勝負をつけたら孤児も未亡人も生まれないのに、印象的な言葉です。