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絵本紹介(228) THE STOLEN MEALIES (盗まれたとうきび)2015年09月17日 23:39

題名   : THE STOREN MEALIES (盗まれたとうきび)
作     : アフリカ民話、 Lesley Whitwell 再話
絵     : Mario Sickle
発行所  : Human&Rousseau

 今回ご紹介する絵本は、珍しく南アフリカ産です。アフリカの民話を元に製作された絵本なので、描かれた風景もサバンナです。文化が大きく異なりそうな国のお話ですが、道徳は世界共通のようです。


 昔々、動物たちはそれぞれが自分自身と家族を養うための畑を持っていました。そしてその畑に毎日毎日通ううちに、動物の家から土地までの地面は踏み固められて、いつしか小路ができました。

 ただ、リスは他の動物の畑よりずっと遠くに畑を持っていましたが、木の上を伝って畑まで行けたので、小路は必要ありませんでした。

 ある年、リスは一生懸命働いて畑でトウキビを育てて、あとは収穫するだけになりました。ところが、ある日リスが一生懸命育てた畑をウサギが見つけました。


一体誰の畑?ウサギは注意深く畑の周りを見て回りましたが、畑から持ち主の家まで通じる小路がありません。
 そこでウサギは翌日自分の奥さんと子供たちを連れて畑まで来ると、皆総出で自分たちの家まで小路を作って、踏み固めました。そしてトウキビを刈り取って、自分たちの家に持ち帰りました。

 あくる日自分の畑からトウキビが持ち去られていることに気づいたリスは、物陰に隠れて犯人を待ちます。するとそこにウサギが現れました。
 ここは私の畑だと抗議するリス。ところがウサギは、畑には自分の家につながる小路しかないから、この畑は自分のものだと言って取り合いません。


 怒ったリスはウサギが自分の畑を奪ったと動物の裁判所に訴えます。しかし驚いたことに、動物の世界では小路でのつながりで畑の所有権が決まることになっていて、ライオンの判事は畑をウサギのものと判決を下してしまいました。


 大手を振ってトウキビを根こそぎ持ち去ろうとするウサギの家族の姿を、リスは口惜しさと無力感でただぼおっと見ています。
 その時、大粒の雨が降ってきたので、ウサギの一家は刈り取ったトウキビの束を道端に於いて、あわてて雨宿りできる場所に隠れました。

 すると、どこからともなく大きなカラスが飛んできて、羽を広げてトウキビを雨から守ってくれました。  雨が上がって、ウサギが親切なカラスにお礼を言いに行くと、カラスは、「トウキビは俺が見つけた俺のものだ」といって、全部大きな足で掴んで飛び去って行きました。


 リスはカラスにしてやられたウサギの話をあちこちに面白おかしく吹聴して回ってこう言いました。
 「結局、種をまかないやつは、きっと収穫できないのさ。」


 最後の一言がきっとアフリカの格言なのかな? 「働かざる者食うべからず」みたいな感じですかね。きっとどこの世界にも楽して人の上前跳ねるずるい輩がいるのでしょうね。
 しかし、このお話の場合、ずるをしようとしたウサギはトウキビをカラスに奪われてくたびれ損ですが、元々畑で一生懸命働いたリスには何も残らないで、関係ないカラスがみんな持って行ったのに、いわゆる「めでたしめでたし」なのですかね? なんかしっくり来ませんが。。。。
 アフリカの絵本は初めてですが、絵のタッチ(もしかすると版画かも)や色使い(背景が黄色なんて。。。)や、ヨーロッパ、北米、アジア、どことも違って相当ユニークです。お話はグリムチックだけれど。