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絵本紹介(225) アライバル2015年09月06日 22:38

題名   : アライバル
作     : ショーン タン
発行所  : 河出書房新書

 今回ご紹介する絵本は非常にたくさんの絵で構成されて、言葉は一言も出てこない絵本です。絵本というより画集みたいですが、一つのストーリー性を持って展開していくので、やっぱり絵本と呼ぶべきなのでしょう。作者が製作に4年もかけたという上質の絵本です。


 文章がないので作者の語ろうとした物語を推測してご紹介すると。。。
 ある親子三人が暮らしている国の状況が不穏になってきて、父親は一人避難先を探して旅立ちます。


 不安な船旅を終えて到着した国は、民族も言葉も文字も異なる未知の国。厳しい審査を経て、父親はようやく入国を許されます。


 右も左もわからない街。身振り手振りに絵も使ってようやくたどり着いた宿屋の部屋の寝床には、見たことも無い動物が。見た目は悪いけど、意外と人懐っこいヤツでした。


 翌日、食料を探しに出た街で見たことも無い食料に出会って、おそるおそる食べてみます。

 そして出会った先着の移民たちとの交流から、彼らが自分の国よりももっとひどい状況の国から逃れてきたことを知ります。学ぶことを取り上げられ、単純労働を強制されていた少女。巨大な掃除機で人間を吸い込む巨人たちから逃れて来た家族。無謀な戦争に駆り出され、片足を失った老人。皆命からがら逃げてきて、今はつつましくも平穏に暮らしています。

 やがて新しい国で仕事を得た父親。

 故郷に残して来た妻と子に手紙を書き、二人を呼び寄せます。

 ようやく新しい国で安心して暮らせるようになった三人は、その国の文化を受け入れて、変なペットと一緒に新しい家族の歴史を紡いでいくことになりました。



 ちょうどEU圏に流入する北アフリカや中東からの難民のニュースが連日報道されているこの時期、今の時代を予感していたかのような絵本です。
 移民に寛容と言われるドイツにたどり着いた難民の人たちが、この絵本の様に安全で温かい住まいと、労働が正当に評価される仕事にありつけたらよいのですが。。。
 何度かドイツを旅して、街角で物乞いをするトルコ系移民の姿を良く見かけました。ところが、ドレスデンという街ではそのような物乞いがいません。不思議に思っていたら、ドレスデンは移民排斥運動が激しい街だそうで、きっと危険で暮らせないのでしょう。
 新たにドイツに流れ込んだ難民の多さの反動で、ドイツ国内でネオナチのような極端な移民排斥が活発化しなければよいのですが。。。
 地理的には北アフリカや中東から遠く離れた日本ですが、行く先の無い難民たちを受け入れる度量を持っても良いのではないかと感じます。ご都合主義で産み落とされた「積極的平和主義」という怪しげな言葉ですが、困っている人たちの救済や、人道的リーダーシップをこそを言うんじゃないですかね。