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絵本紹介(167) トムテと赤いマフラー2015年02月05日 23:59

題名     : トムテと赤いマフラー
文      : レーナ・アッロ
絵      : カタリーナ・クルースヴァル
訳      : 菱木晃子
発行所   : 光村教育出版

 今回のご紹介は北欧スウェーデンで2013年に発行された新しい絵本の日本語訳版です。なくしたマフラーが冬の森を旅する妖精トムテの役に立つ。私たちがスウェーデンという国にもつイメージにぴったりの、素敵なおとぎ話です。

 小さい頃、マフラーをなくしたことがありました。
 車のまどをあけて、風になびかせていたら、ちょっと手を緩めた瞬間に、とんでいってしまったのです。


 マフラーがどうなったのか、ずっと気になっていましたが、わたしがマフラーがどうなったのか知ったのは、時が流れてずいぶん後になってからでした。

 ある夜のこと、あたりはとても静かで、眠りに落ちていくときに、それは聞こえてきました。なくしてしまったマフラーの話です。

 秋が深まった森の中を、一人のトムテが歩いていました。

 トムテは渡り鳥のように旅をしますが、鳥とは逆に、秋になると北に向かって歩くのです。

   森のはずれまで来ると、トムテは立ち止まり、耳をそばだてました。
 湖の方から、トムテにしかわからないかすかな声が、助けを呼んでいます。

 湖は薄い氷で覆われていました。
 トムテがかすかな声をききながら湖に向かって二三歩あるくと、なにかを踏んづけました。
 しわくちゃな赤い布でした。
 トムテはそれを拾い上げて、ヨットの帆の様に広げると、氷の上に足を拡げて立ちました。すると赤い布に風がいっぱいに入って、トムテは氷の上を勢いよく滑って行きました。


 湖の上をしばらく滑ると、トムテは氷に足を取られて飛べなくなっている鳥を見つけました。そして食事に使っているスプーンでとりの足元の氷を少しずつ掻きとって、とうとう鳥を自由にしてあげました。


 疲れ切っていた鳥と一緒に赤い布にくるまって、トムテは湖の上で一晩を過ごしました。


 その後もマフラーはある時はヨットの帆の様に、ある時は寝袋の様に、トムテの旅を支えます。  そしてクリスマスが近づいたある日、マフラーをなくした女の子の街に、トムテはたどり着いたのです。

 ウクライナ民話に有名なてぶくろのお話しがあります。森で狩人が落とした片方の手袋に、最初にネズミが入って暖をとっていたら、リスがやってきて、ウサギがやってきて、キツネがやってきて。。。と、森の生きものみんなが仲良く寒さをしのぐお話。
 てぶくろとはちょっと違いますが、やっぱり人の落し物がもりの妖精や生きものに上手に使われて、第二の人生?を役立って過ごす。なんかいいおとぎ話ですよね。しかもスウェーデンには普通にトムテが暮らしていて、ときどき人の住まいの近くまでやってきて、静かな夜に物語を語ってくれる。。。 うーん、やっぱり憧れる国ですね。一度は訪ねたいなー。