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絵本紹介(114) THE ANIMALS 「どうぶつたち」2014年07月27日 22:55

題名  : THE ANIMALS 「どうぶつたち」
詩    : まど みちお
選・訳  : 美智子
絵    : 安野 光雅
出版社 : 文藝春秋社

 絵本と言えないかもしれませんが、すごい詩集に出会ってしまいました。(きっととても有名なのでしょが、恥ずかしながらしりませんでした。)
 今年2月に104歳で亡くなった、唱歌「ぞうさん」の詩で有名なまどみちおさんの詩から、美智子皇后が20篇を選んで英訳をされ、「旅の絵本」の安野光雅さんが挿絵を描かれた詩集です。

 普段詩などよく解さない私にも、二度と実現しない黄金の組み合わせで作られたこの詩集の深さが伝わって来て、仕入れたものの販売するのが惜しくなりつつあります。

 個人的に素敵だなーと感じた二編ご紹介いたします。


【ああ どこかから】

  庭を とおって ゆうびんやさんが かえっていく
  
  きょうも みおくっているのは 屋根のスズメと かきねのデンデンムシだ

  「ごめんよ きみたちあての 手紙は 来てないんだ」というように
ゆうびんやさんは そそくさ いっちゃった

  ああ どこかから こないかなあ

  なの花びらのような 手がみと マメのような こづつみが
――ゆうびいんって

  スズメたちに デンデンムシたちに

【AH, FROM SOMEWHERE...】

Through the garden
The mailman is on his way out.

It is always
The sparrows on the roof
And the snails in the hedge
Who see him off.

But, as if telling them
"Sorry, no letters for you"
The mailman hurries away

Ah, could it not happen
That from somewhere
Will come a letter and a package
For those sparrows and snails,
With the mailman calling,
"Here you are!"

A letter
Like a flower petal,
A package
Like a bean?


【ねむり】

  わたしの からだの ちいさな ふたつの まどに
  しずかに ブラインドが おりる よる

  せかいじゅうの そらと うみと りくの
  ありとあらゆる いのちの
  ちいさな ふたつずつの まどに
  しずかに ブラインドが おりる

  どんなに ちいさな ひとつの ゆめも
  ほかの ゆめと ごちゃごちゃに ならないように

【SLEEP】

At night,
When quietly
The two tiny windows of my body
Lower their blinds,

The two tiny windows
Of all creatures of all kinds,
Living in the sky,
The sea, and on land,
Quietly
Lower their blinds, too.

So as not to cause
A single dream

To be mixed
With any other.

 なんて優しい詩。
  まどさんの詩それ自体やさしいのはもちろんですが、英訳された詩もまた、柔らかくて、やさしくて。お目にかかったことはありませんが、皇后のお人柄が現れているのですね。
  静かに感動しています。泣いています。