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絵本紹介(84) てつぞうはね2014年04月10日 23:35

題名   : てつぞうはね
作    : ミロコマチコ
出版社 : ブロンズ新社

 今回ご紹介は2013年9月に出版されたばかりの新しい絵本で、作者が8年間一緒に暮らした愛猫鉄三との思い出と命の繋がりを、「てつぞうはね」で始まる素朴な言葉で淡々と語っています。
 親しみやすいイラスト、脚色のない自然な言葉と行間から、去って行った命への感謝と新しい命への慈しみが伝わってきました。


 わたしはかつて、白くてふわふわで、座るとでっかいおにぎりみたいな猫を飼っていました。名前はてつぞう。


 てつぞうは8kgもある大きな猫なのに、人とも猫とも仲良くしないで、いつも目をひん剥いて怒り狂っている暴れ猫。
でもわたしにだけはグルグルと甘えてすり寄ります。

 てつぞうはハムとパイナップルが大好物で、知らん顔で人の隙をついて咥えてにげたり、歯磨き粉のハッカの匂いに首ったけの変な猫。
洗面台で寝たり、雷で腰を抜かしたり。。。

 そんなてつぞうが、わたしと一緒に暮らした8回目の冬に病気で死んでしまいます。あんなに大きかったてつぞうなのに、亡くなる前は子ネコみたいにちいさくちいさくなって。


 次の春、てつぞうを失った悲しさに「もう猫を飼うのは無理」と思っていたわたしは、まるでそれが運命だったように兄弟の捨て猫を迎え入れることになりました。

 二匹はてつぞうのトイレで用をたして、テツゾウの食器で餌をもらって。寝るところだって洗面台。


 てつぞうは逝ってしまったけど、命はこうしてつながって、わたしの心のてつぞうはきっと今でもわたしにグルグルスリスリしてくれているのでしょうね。