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絵本紹介(80) オーパルひとりぼっち2014年03月27日 23:25

題名   : オーパルひとりぼっち
原作   : オーパル・ウィットリー
編    : ジェイン・ボルタン
絵    : バーバラ・クーニー
訳    : 八木田宜子
出版社 : ほるぷ出版

 今日ご紹介する絵本は、とても不思議な絵本です。
 オーパルという女の子が5歳から6歳にかけて書き残した日記を元にしているのですが、オーパルは両親に先立たれ、育ての母に嫌われ、貧しくてひとりぼっちで、どちらかと言うと幸薄い少女です。
 そんな女の子が書き残した日記なのに、とても清らかで希望にあふれていて、悲しいはずの少女オーパルの物語がすがすがしく感じられました。
 クーニーによる挿絵で描かれたオーパルはいつも無表情ですが、ちっとも悲しい感じがしません。むしろ整然とした絵がすがすがしさの香りづけに、一役も二役も買っています。

 この絵本の魅力は、絵の細部まで堪能しながらゆっくり読んでもらう方が伝わると思いますので、少しだけ雰囲気をご紹介。

  あたしと くらしている ママは、あたしが やっかいのもだって いうのよ。
  やっかいものって、 おとなが まわりに おいておきたくない ものだって おもう。


 きょうは がっこうに いかなかった。
 きょうは せんたくびだから いえに いなさいって、 ママが いったの。
 しごとは ぜんぶ おわりました。
 あたしは げんかんの かいだんに すわって、 じを かいている とこ。 かいだんの したには、 ネズミが なんびきか すんんでいるのよ。 とっても きれいな めを しているの。


 かなしくなると、 あたしの 木と いろいろな ことを おはなしするの。 すごく りっぱな 木なの。 たましいを もっていて、 あたしの きもち わかってくれるの。


 きょうね、のこぎりが 木を きっていって、 木が うめくのを みちゃった、 きいちゃった。 のどの おくが へんな きもちに なってね、 あたし たちあがれなかった。

 もちろん、編者や訳者の技術がすごいのでしょうが、字を言葉も未熟な5、6歳の子供がこんな日記を書き残せるなんて、奇跡のようです。
 ひとりぼっちのはずのオーパルが、実はたくさんの生きものや隣人をすすんで愛することで、いつか周りからも愛されて。 人の暮らしにとって何が大切か、小さな子供から教えられたような気持ちです。

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