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絵本紹介(79) 紙しばい屋さん2014年03月22日 22:00

題名   : 紙しばい屋さん
作    : アレン セイ
出版社 : ほるぷ出版

 私の世代はかろうじて知っていますが、ちょっと若い人たちは紙しばい屋さんという商売があったこと、もしかしたら知らないかも知れませんね。
 この絵本は昔紙しばい屋さんだったおじいさんが、久しぶりに自転車に紙芝居を積んで街に出かけたお話です。

 今からちょっと昔、山あいの小さな家に、おじいさんとおばあさんが二人だけで住んでいました。
 ある日おじいさんが、久しぶりに紙しばい屋さんの仕事に出かけてみようと思うとおばあさんに言いました。するとおばあさんはそれじゃお菓子をつくりましょうと、嬉しそうに答えます。
 翌朝、おばあさん手作りのお菓子と紙芝居を自転車の荷台に積んで、おじいさんはご機嫌で鼻歌を歌いながら山を下りて街に向かいました。

 でも久しぶりに昔よく通った街に入ると、景色が大きく変わっていて、おじいさんはどこかで道を間違えたのではないかとさえ思いました。高い建物だらけで、道は車がいっぱいで、おじいさんの自転車は邪魔者あつかいされてしまいました。


 やっとの思いでよくこどもたちに紙しばいを読み聞かせた空き地にたどり着くと、その周りも家やお店がいっぱい増えていました。


 街のあまりの変わり方にため息をついたおじいさんは、それでも気を取り直して紙芝居とおばあさんが作ってくれた宝石のようにきれいなお菓子を用意します。
 そして拍子木を取り出してカチーンと鳴らしました。

 「さあ、みなさん、こっちにいらっしゃーい!紙しばい屋さんがきたよー!」

 さて、こんなに変わってしまった街で、昔みたいにおじいさんの紙しばい屋さんにお客さんは集まってきてくれるでしょうか?

 東京オリンピックの頃、原宿ではもう紙しばい屋さんの姿を見ることはありませんでした。
 でも移り住んだ秋田では、まだ紙しばい屋さんは現役で、夕方遊び場にしていた公園に鐘を鳴らしながら自転車でやってきました。
 当時、紙しばい屋さんのシステム(=お菓子を買った子供だけ紙芝居を見られる。)がわかっていなかったので、私にとってはただの水飴やさん。10円玉を差し出して大好きな水飴を受け取ると、紙芝居は見ないでまた自分の遊びに興じていましたっけ。おバカですねぇー。

   とってもアナログな世界ですが、おじさんと子供たちのコミニュケーションが生まれて、いい時代でした。  今は、「知らない人から食べ物もらっちゃいけません!」って、教えなきゃならない時代ですね、残念ながら。