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絵本紹介(76) Florian and Tractor Max2014年03月13日 23:20

題名   : Florian and Tractor Max
作    : Binette Schroeder
出版社 : North-South Books

 この物語は動物と機械の友情がテーマの珍しい、でも暖かいお話しです。
 矢川澄子さんの翻訳で邦題「こんにちはトラクター・マクスくん」として日本でも1973年に出版されているようですが、残念ながら読んだことありませんでした。

 田舎の中の田舎で、農夫のクラースさんと葦毛の馬フロリアンは、お皿の様に真っ平らな畑を耕して暮らしていました。
 でも二人ともすっかり年をとって、夜まで一生懸命働いても畑の半分しか耕せなくなってしまいました。

 クラースさんは言いました。「わしらはすっかり老いぼれてしまったな。だけど明日になったら若くて力持ちのトラクターマクスがやって来てくれる。おまえはのんびり草をたべて過ごせる。」

 それを聞いてフロリアンはきっとマクスと友達になれるに違いないと喜びました。

 次の日の朝早く農場に軽快なエンジン音が響きました。
 赤くて大きなマクスが煙を吐いて立っています。農場の動物たちは皆びっくりして集まってきましたが、マクスは目もくれずにさっそく畑を耕し始めました。


 フロリアンは一日中働き続けるマクスをずっと待ち続けて、ようやく納屋に戻ったマクスに話しかけようとします。
 でもマクスはフロリアンを無視して納屋の奥まで進むと、エンジンを切って眠ってしまいました。


 次の日も、その次の日も、マクスはフロリアンを相手にしてくれません。
 すっかりしょげて元気を無くしたフロリアンにクラースさんは「マクスのことは気にするな」と声をかけますが、あまり役立ちません。

 一月以上続いた長雨が止んだばかりのある日、マクスはクラースさんが止めるのを聞かずに畑に出てぬかるみにはまって動けなくなってしまいます。
 泥の中でもがいて、逆にどんどん沈んでしまったマクス。
 一体どうなるのでしょう。

農耕馬とトラクター。農作業の新旧主役交代というと、機械に追われた馬が寂しく売られていく姿を真っ先に想像してしまいますが、このお話では農夫のクラースさんは馬のフローリアンに楽をさせるためにトラクターのマクスを購入したり、自分の役目を奪われるフローリアンもマクスに意地悪するどころかと仲良くなろうといろいろ努力したり。
 柔らかいタッチの絵と一緒になって、現実ではありそうもないけど、でもこんな関係があったらいいなという暖かな世界が描かれています。

 こんな風に人と自然と文明も仲良く寄り添えたら素敵で、そのカギを握るのは人なんですね。みんなクラースさんみたいだと良いのに。