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絵本紹介(3)2013年06月01日 22:29

  タイトル: 最後のおさんぽ
  文: 大島 妙子
  絵: 大島 妙子
  出版社: 講談社

 今日は思い切り泣かされてしまった絵本を紹介します。

 いい年のオジサンが、涙と鼻水抑えられなくなったことを告白するのはとても恥ずかしいのですが、この絵本は格好気にする余裕も無くするほど、心の琴線に触れました。

 愛犬ヒラメを老衰で失った主人公は、亡骸を抱きしめながら泣くうちに寝入ってしまいます。ふと目を覚ますと、目の前に若返ったヒラメの顔が。しかも背中にはかわいい羽根がついています。

 ヒラメは主人公にむかって、「天国いくのついてきて。」

 かくして主人公はリュックにヒラメの好きなお菓子をいっぱいつめて、天国までの最後のおさんぽに出かけます。

 主人公はできるだけゆっくり行きたいのに、若返って軽快な足取りで先を急ぐヒラメ。

 途中ヒラメに好きなお菓子をあげて一休み。もう何も気にせず好きなだけ食べさせてあげられます。
 いろいろな思い出を語り合ううち眠ってしまったヒラメに、「ねえ、幸せだった?うちのコで」とそっと問いかけてみます。

 いよいよ天国の門が見えると、ヒラメはブルブル震えだして先に進めません。主人公がヒラメを抱きしめて言った言葉に、そこまで必死にこらえていた私の涙は堰を切ってあふれ出しました。

 「このまま きたみち もどろっか。」
 「ずっと そばにいて、オバケのままでも いいからさ。」
 
 犬と一緒に暮らす者にとって、やがて来る愛犬との別れは覚悟はしていても、受け入れたくない運命です。
  それゆえ主人公の心の動きが自分の気持ちと重なって、物語の中に引きずり込まれました。
 また大島妙子さんのヒラメのイラストが愛らしくて、悲しさを二倍にも三倍にも増幅させてくれます。

 結局天国の入り口でヒラメを勇気づける出来事がおこって、ヒラメは楽しそうに天国に旅立っていくのですが、うれしそうなヒラメを見てほっとする気持ちと、一人残される寂しさが痛いほどわかって、読み終わっても余韻で涙が止まりませんでした。

 実はこの紹介文を書きながら、また鼻水が止まりません。
 本当に、オバケになってもいいから、そばにいて欲しい。