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絵本紹介(289) すみれ島2016年09月04日 17:13

題名   : すみれ島
文    : 今西 祐行
絵    : 松永 禎郎
発行所 : 偕成社

 今日ご紹介する絵本は、太平洋戦争末期の特攻隊の悲劇を題材にした物語です。戦争では何が行われたのか、語れる証人が減っていく時代に、読み継がれて欲しい物語の一つです。

 昭和20年春、九州の南の端の小学校のま上を、毎日のように日の丸を付けた飛行機が飛び過ぎて行くようになりました。子供たちは手を振り、飛行機もそれに応えて翼を軽く振ります。子供たちは喜びましたが、教師たちはその飛行機が爆弾と片道だけの燃料を積んだ特攻機であることを知っていました。


 やがて子供たちは航空隊の兵士に手紙や絵を書いて送るようになり、それも飽きると近くですみれを摘んで花束にして航空隊に届けるようになりました。


 するとある兵士から返事が届きます。すみれを貰った夜、仲間と二人で夢中になって懐かしいすみれ相撲をしたこと。すみれの花を散らしたままのベッドですみれの香りにつつまれてぐっすり眠れたこと。出撃の命令を受けて、ゆうべが本当に楽しいよるだったと子供たちにお礼を述べて、兵士は飛び立って行きました。


 それからもどれくらいの兵士が子供たちから貰ったすみれを持って飛び立ったことか。そんな特攻機の中には、敵の戦艦にたどり着く前に故障して墜落するものも少なからずおりました。

 戦争が終わって何年かすると、南の小さな島にすみれが群生するようになりました。子供たちから贈られたすみれ花を積んだ飛行機から種が落ちたのかもしれません。


 名前の無かったその島は、地域の人たちにすみれ島と呼ばれています。

 今私たちはISの自爆攻撃のニュースを聞いて、なぜ簡単に騙されて大切な命を捧げるのか、理解に苦しみます。
 でもたった70年ほど前に、日本でも近いことが起きていました。
 大切なものを守るため、国の勝利に役立つため、自らの命を差し出した若者たち。きっと真面目で純粋だったのでしょう。生きていれば、どれだけその後の日本の発展に貢献したことか。

 いつの時代にも純粋な若者を、自分たちの思惑を成し遂げる道具に仕立てようとする大人がいること、子供たちに教え、悲劇を防ぎたいものです。