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絵本紹介(267) ちいさなりすのエメラルド2016年03月20日 22:02

題名  : ちいさなりすのエメラルド
作    : そのだ えり
発行所 : 文渓堂

 今日ご紹介する絵本は、全編通して言葉遣いがとても柔らかい。「このほんよんでくださらない?」「おうちまでおおくりしましょう。」 最近の生活ではすっかり聞かなくなってしまった上品で丁寧な言葉。「日本死ね!」もインパクトがあって投稿者の怒りが伝わって良いんですが、毎日乱暴な言葉にさらされていると心がささくれ立ってきます。時にはこの絵本のようなほんわりとした世界に身をゆだねてみると、安らぐかもしれません。

ちいさなりすのエメラルドは、寝る前、いつもウサギのガーネットに本を読んで貰います。
 「むかしむかし ある くにに あかが だいすきな おうじょさまが いました。」
 いつだってガーネットが本を読んでくれたら、エメラルドはあくびがでて来るんです。


でもある晩ガーネットが本を読み始めると、仕事仲間が訪ねて来て、ガーネットは行かなければならなくなりました。
 独りぼっちで家に残されたエメラルド。ちっとも眠くなりません。

 そこでいつもの本を読むことにしました。でもまだ文字が良く読めないエメラルド。文字ばっかりの本に苦労しています。
 「やっぱり だれかに よんで もらわなくちゃ」

エメラルドは本を持ってとなりのひつじおばさんの窓をたたきました。  とんとんとん 「ひつじの おばさま こんばんは」「このほん よんで くださらない?」
 ひつじのおばさんは少しだけですよと言って本を読んでくれました。
 「はいはい きょうは ここまで」 ひつじおばさんにそう言われても、まだ眠くならないエメラルド。

   ほんをよんでくれる人をもとめて、エメラルドは夜の街を彷徨いました。
 読んでくれている間に自分が眠ってしまったカバのお兄さん。
 老眼で文字がはっきり見えないイヌのお巡りさん。
 読んでくれる人はいましたが、エメラルドは満足できません。

 エメラルドがある家の窓から中をのぞき込んだら、子豚の三兄弟がエメラルドを見つけて、「わあ、 おねえさん、 ごほん もってるの? よんで よんで!」
 「あら。 じゃあ、すこしだけですよ」


 あれれエメラルド、本読めたっけ?
 簡単に引き受けちゃって大丈夫?
 だれかに本を読んで貰えるって、とても幸せなことですね。読み聞かせを聞きながらまどろめたら最高。もっとも最近は寝床に入ったら5秒で意識無くしていますが。