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絵本紹介(265) きょうりゅうがすわっていた2016年03月06日 22:40

題名    : きょうりゅうがすわっていた
作      : 市川宣子
絵      : 矢吹申彦
発行所   : 福音館書店

 お子さんをお持ちの方なら共感していただけると思いますが、子供(たち)が生まれた日の出来事って、深く記憶に刻まれて残りますよね。 今回ご紹介する絵本は、ただでさえ記憶に残る日に、信じられないくらい特別な出来事が起きたお父さんのお話です。まさかぁーと思いつつ、だんだん本当にあったら素敵だなぁと思わされる暖かい物語でした。


 男の子の6歳の誕生日に、お父さんが「きみがうまれたときのはなしをしようか。」と語り始めました。


 お父さんが言うには.。。。。

   男の子が生まれる少し前から、お母さんは病院に入院したので、お父さんは一人で留守番でした。

 ある朝、朝食を食べるお父さんの後ろの窓を、誰かがこんこんと叩きました。 窓の高さは10階なのに。。。。
 お父さんが応えずにいると、まどが開いて、はあはあと暑い息が近づいてきて、朝食のサラダをペロッと食べて行きました。


 おそるおそる窓から外を見たら、窓の下の交差点にきょうりゅうが座っていたんです!
 きょうりゅうは人を襲う風はなくて、街路樹の緑をむしゃむしゃ食べていました。


 お父さんはその日の仕事帰りにキャベツを30個買ってきて、きょうりゅうに食べさせてあげました。

 それからも、キャベツをあげたり、うんちを始末したり、きょうりゅうの世話をしてあげました。

 クリスマスの晩、お父さんはきょうりゅうの足元からちぃちぃというちいさな鳴き声を聞きます。
 きょうりゅうのお腹の下には卵があって、あかちゃんが生まれたのでした。


 「おまえもあかちゃんをまってたのか、おめでとう」ときょうりゅうに声をかけたら、きょうりゅうは自分のあかちゃんとおとうさんを背中に乗せて、お父さんをお母さんが入院している病院の前まで連れていってくれました。

 すると、ぽっかりと明かりのともったお母さんの病室に、赤ちゃんが生まれていました。

 お父さんはきょうりゅうの背中から部屋の中に滑り降りて、あかちゃんの為に用意していた小さなクリスマスツリーをベッドに置きました。

 あかちゃんを待つ間に、お父さんときょうりゅうには待つ者同士の友情が芽生えていたんですね。きょうりゅうもお父さんかな?
 木板に直接明るいパステルカラーで描かれた絵がとても柔らかで、印象的な絵本でした。

 私の場合、長女の誕生の知らせを受けて病院に急ぎたかったのに、季節外れの大雪で混乱した交通に阻まれてとてももどかしい思いをしたこと。次女の誕生を分娩室の外でずっと待っていたのに、看護師さんの引継ぎミスで、やっと会えたのは誕生から4時間も後だったこと。どちらもトラブル絡みで苦い思い出ですが、昨日のことのように思い出されます。

   お父さん、お母さん、たまにはどんなに誕生を心待ちにしていたか、お子さんに語ってあげてはどうでしょう?照れくさいけど。