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絵本紹介(253) しろねこくろねこ2016年01月03日 23:59

題名   : しろねこくろね
作     : きくちちき
発行所  : 学研プラス

 今回はダイナミックなのに柔らかくてあたたかな絵が人気のきくちちきさんの出世作「しろねこくろねこ」をご紹介です。
 絵本の中身ももちろん素敵なのですが、使用している紙の手触り、色合い、質感がとても凝った絵本です。(なので、ちょっとだけお高い) 大人が座右の絵本としてキープして、何年かに一度読み返してみる。。。鑑賞に堪える絵本だと思いますので、機会あればぜひ一度手に取って見て下さい。


 しろねこと くろねこが いました
 しろねこは くろねこの くろい けが すきでした
 くろねこは しろねこの しろい けが すきでした
 2ひきは いつも いっしょに いました

 (こういう出だしに、ついつい名作「しろいうさぎとくろいうさぎ」を連想しましたが、全く別物でした。)

 しろいねこの毛は、よく周りの色に染まってきれいな色になりました。
 草むらの緑、どろんこの茶色、木の葉の黄色、夕日の赤。


 その度にいろいろな動物たちがしろいねこを褒めて、その代りくろねこのことは「いつも同じ黒」とけなします。

 街に出かけても、たくさんの人に人気のしろねこ。それに引き換え相手にされない自分。


   くろねこはたまらなく悲しくなって、ひとりでやみくもに走り出しました。ひとり静かに、知らない道を歩きつづけます。

   でもくろねこから少し離れて、しろねこがそっと後についていました。

 くろねこはやがて暗くて大きな森に入りましたが、それでもあるきつづけました。

 パッ!
 くろねこの目の前が急に開けて色の洪水が押し寄せてきました。
 くろねこは一面色とりどりの花の咲く世界に入り込んだのです。


 ずっとくろねこの後をついてきたしろねこが言いました。
 「たくさんの きれいな はなの なかで いちばん めを ひくのは くろねこ」


 くろねこはびっくりして自分の黒い毛をじっと見つめました。  くろい自分がきれいだって?  しろねこと くろねこが いました
 しろねこは くろねこの くろい けが すきでした
 くろねこは しろねこの しろい けが すきでした
 2ひきは いつも いっしょに いました

 ちょっとキュンと来るお話しだと思いませんか?
 2ひきのねこは親友?恋人? とてもすきな人がみんなの人気者だったり、とても褒められたりするのは、本当はうれしいはずなのに、なんか置いて行かれたようで、自分がみじめで寂しくなる。そんな経験、誰にもありますよね。

 寂しくて心がいじけてしまった時、そっと寄り添ってくれる友や恋人がそばにいてくれたら、他になにもいりませんね。