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絵本紹介(214) ルッキオとフリフリ おおきなスイカ2015年07月26日 23:45

題名    : ルッキオとフリフリ おおきなスイカ
作     : 庄野ナホコ
発行所  : 講談社

 暑い夏、昔も今もスイカが欠かせませんね。今回ご紹介する絵本はちょっと間抜けな野良猫コンビ、ルッキオとフリフリが庭で大きなスイカを見つけたことから始まる騒動のお話です。


 ルッキオとフリフリのゆめは、おおきなおやしきに「しゅうしょく」して、だんろのまえにベッドをもらい、ぎんのおさらでまっかなマグロのおさしみをいただくことでした。


 ところが、ルッキオとフリフリのほんとうのおうちは、あめとすきまかぜがはいりほうだい、ベッドはわたのはみでたきたないソファ。ごはんといえばネズミがとれたらおおごちそうで、たいていはいたみかけたあまりもの。それすらたべられないひもあったのです。


 ある朝、フリフリが庭の隅におおきなスイカがなっているのを見つけて、ルッキオの所まで転がしてきました。
 特大のスイカを見つけた二人の会話が弾みます。
 「こりゃずげえ」
 「だろ!だろ!」
 「これ、はまでうったら、マグロかえるかもな。」
 「マグロ!」

 二人は昨日からろくなものを食べていなくて腹ペコでしたが、元気を出してさっそくスイカを手押し車に乗せて浜まで運んで、畑で採れた他の野菜と一緒に売り始めました。


 珍しがってお客さんは覗いて行くものの、スイカが大きすぎることが災いして誰も買ってくれません。一日中暑いお日様に照らされて、スイカは熟れて割れ始めてしまいました。

 すっかり当てが外れたルッキオとフリフリは、スイカは自分たちの夕食にすることにして、手押し車にスイカを乗せて、来た坂道をトボトボと登って行きます。と、手押し車が傾いて、スイカが落っこちて坂をゴロンゴロン、どんどん転がり落ちて行きました。


 必死に後を追うルッキオとフリフリ。でも転がったスイカは崖の上から海の中に海に落ちて行ってしまいました。


 このままスイカは海の藻屑と消え去ってしまうのでしょうか?
 ルッキオとフリフリは今晩も空腹ですごすのでしょうか?
 いやいや、この後意外な展開が。。。

   夢が立派なお屋敷に就職して、銀のお皿でマグロのお刺身を食べること。ちょっと間抜けなルッキオとフリフリ、ささやかな夢を持って市井の片隅で一生懸命生きている二人に妙な親近感が湧いてしまいます。傷だらけの天使のオサムちゃんとアキラみたい。
 クロマグロでなければ、たまには赤身の刺身も食べられる人間の生活に感謝しなければ、ですね。