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絵本紹介(205) いばらひめ2015年06月21日 22:00

題名    : いばらひめ
作     : グリム童話
絵     : エロール ル カイン
訳     : 矢川 澄子
発行所  : ほるぷ出版

 今回ご紹介する絵本は、グリム童話なのでお話はどこかで耳にされたこともあるかもしれませんが、絵が美しい絵本です。1976年に初版が発行されてしばらく絶版になったあと、今年復刊しました。エロール ル カインの緻密で色彩豊かな絵は、同じグリム童話絵本の「おどる12人のおひめさま」以上で、まるで画集のようです。

 むかしむかしあるところに子供の王様とお妃さまがいて、毎日子供が欲しいと思いながら暮らしていました。
 ところがある日のこと、お妃さまが水浴びをしていると、カニが出てきて、もうすぐお姫様をひとり授かるでしょうと告げて行きました。


 しばらくすると、お妃さまはカニのお告げのとおり、かわいいお姫様を生みました。王様はさっそくお姫様の誕生祝を催して、国中から12人の仙女(魔法使い)を招待しました。
 ところが食器の数の関係で一人だけ招待されない仙女がいて、嫉妬のあまり、「お姫様は15の歳につむ(糸紡ぎ)にさされて死ぬ」と呪いをかけてしまいました。他の仙女にはその呪いを取り消す力はなく、せいぜい「死なずに100年眠り続ける」と軽くするのがやっとでした。

 王様はお姫様の安全を守ろうと、国中のつむを焼かせました。

 月日が巡ってお姫様はとてもきれいで、しとやかで、優しくて、賢い娘に育ちました。
 お姫様がちょうど15歳になった日、王様とお妃さま留守で、お姫様は一人でお城の探検をしていました。そして古い塔のてっぺんの部屋で、お婆さんがつむで麻糸をつむいでいるところに出会いました。


 お姫様はつむを珍しがって、自分でもやってみようと手を出しますが、指をさしてしまいました。するとお姫様はたちまち眠りに落ちて、お城中全体、帰ってきた王様とお妃さま、兵隊も侍女たちも、馬もニワトリも犬も、みんなお姫様の眠りが感染ったように眠り込んでしまいました。

 お城中が眠りに落ちてしまうと、お城はだんだんいばらに取り囲まれて、やがていばらに覆い尽くされてしまいます。
 いばらのお城の中に、きれいなお姫様、いばら姫が眠っていると噂を聞いた他国の王子様が何人も城の中に入ろうと挑戦しますが、みないばらに行く手を阻まれてあえなく失敗に終わります。

 また月日がたち、いばら姫が眠りに落ちてから100年過ぎた頃、ひとりの若い王子が現れて、勇敢にいばら城に挑んで、ついにいばら姫の眠る塔の上の部屋までたどりつくことに成功しました。


 この後のお話は、ご存じの通りいばら姫もお城の人々も目を覚まし、若くて勇敢な王子様と美しくて賢いお姫様は結ばれて、めでたしめでたしです。
 しかし、なんでいつもお姫様ははかなくて美しくて、救いに来るのは若くてかっこいい王子なのでしょう?
 たまにはお姫様が鼻持ちならないわがままヒステリックおばさんで、そこに腹黒い悪徳商人が取り入って来る話があっても良かったんでないかい?ねぇグリム兄弟様。