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絵本紹介(182) そっといちどだけ2015年03月29日 18:00

題名   : そっといちどだけ
作     : なりゆき わかこ
絵     : いりやま さとし
発行所  : ポプラ社

 今日ご紹介する本は、人の為に働く犬、盲導犬のお話しです。物語も、絵も、久しぶりに涙腺直撃の素敵な絵本でした。

 星降るよるに生まれたラブラドール犬の子犬は、ステラという名前を貰います。
 ステラは人に愛されながらすくすく育って、盲導犬としての訓練を修了した2歳の春の日、視覚障害を持つあかねさんと出会いました。

 ステラと初めて会ったあかねさんは、両手でステラのほおをはさんで、「きょうからよろしくね」とやさしくささやいてくれました。


 あかねさんとステラの間は、最初の数か月はぎこちなく過ぎますが、だんだんあかねさんはステラを信じて身を任せるようになりました。  ステラにはそれがうれしくて、しっぽを大きく揺らしました。

 ステラがあかねさんに曲がり角や階段の場所を教えるたびに、あかねさんは「グーッド、ステラ!」と大声でほめてくれて、ステラはその声をきくと幸せでいっぱいになりました。

 夜、あかねさんのベッドの下で、あかねさんのかすかな寝息を聞きながら眠る目を閉じる時が、だいすきな人を一日守り通した充実感に満たされて、ステラには一番幸せなひと時でした。

 秋の帰り道では、あかねさんが「ステラとあるくと、季節を感じることができるわ。夕焼けがきれいでしょう?」と尋ねたので、「きれいよ」と尻尾で応えました。それからは帰り道をゆっくり歩いて、まいにち夕暮れを楽しむ、ふたりの一番好きなひと時になりました。


 そうして季節がいくつも繰り返されて、ステラが10歳になった春のころ、ステラはときどきミスをするようになりました。曲がり角を知らせ忘れたり、階段の前で止まらなかったり。
 そんなときあかねさんはいつも「ドンマイ、ステラ!」と励ましてくれましたが、盲導犬の訓練士さんからは、そろそろ引退の歳と言われてしまいました。でもあかねさんもステラもお互いに離れたくありませんでした。


 それからもステラはミスしないようにと焦れば焦るほど間違いを繰り返して、あかねさんの「ドンマイ」の声はだんだん小さくなります。  ある夜、ステラはトイレでない場所でそそうをしてしまい、あかねさんはステラを抱きしめて泣きました。

 朝から小雪がちらつく冬の日、家の前にバンが停まって、訓練士さんの声がしました。
 「ステラ、むかえにきたよ」
 あかねさんは家の中で震えています。その震えがステラに今日がお別れの日であることを知らせました。



   だめです。
 こうしてご紹介のためストーリーを要約していても涙腺が。。。

 ずっと家族の様に一緒に過ごして来たあかねさんとステラ。ふたりとも別れたくなんかなかったのですが、最後にはステラはあかねさんを守るため、あかねさんはステラを守るため、お互いに別れることを決意します。
 物語は二人の別れの後もまだ少し続きます。そして老後を心静かに暮らすステラが、たった一つあかねさんにお願いすること、そのクライマックスでもう涙で文字が見えなくなりました。

   おじさんは決して人前で読んではいけない絵本です。