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絵本紹介(148) 水たまりの王子さま2014年11月27日 23:59

題名    : 水たまりの王子さま
作     : 山崎 陽子
絵     : 安井 淡
発行所  : 岩崎書店

 今回は30年前に発行されながら、しばらく絶版になっていて、先月復刊したばかりの絵本の紹介です。とても暖かなお話しで、絵も味わい深いので、絶版になっていたのが不思議なくらいです。

 ある日、警官に追われたスリが、安アパートの裏路地に逃げ込んできました。
 警官をやり過ごしてホッとしたスリの頭の上から、「わたしの空をこわさないで」という少女の声が降ってきます。

 足が不自由で外出できないその少女にとって、アパートの2階の窓から見える、間近な裏路地と、水たまりに映った空だけが唯一の世界でしたが、スリは少女が空を映し見る水たまりに足を踏み入れていたのです。


   そんな少女をしばらく話すうちに、スリはすっかり少女のかわいらしさの虜になっていきますが、スリの顔に残る大きな刀傷を見た少女は、「あなたはしあわせの王子さまだわ」と不思議なことを言いました。
 スリの顔が、少女が持っているしあわせの王子の本の挿絵とそっくりだというのです。


 それからスリは少女を喜ばせようと、毎日裏路地に通って真面目に働いたお金で買った花やお菓子をプレゼントしました。

 ある日、久しぶりにお金持ちのお婆さんから財布を掏ったスリは、目の前におばあさんが乗ってきた車いすが置かれてあるのに気付きました。

 この車いすで少女を好きなところに連れて行ってやりたい。そう思ったスリは、車いすも盗んだのですが、警官に見つかってつかまってしまいました。

 それから3か月経って、刑務所から出たスリは、またあの路地裏に向かいました。でも、そこには少女の顔が見えません。
 思い切って表に回って少女の家の呼び鈴を押したスリですが、ドアを開けて出てきたのは、少女とよく似た大人の女の人でした。
 少女はどこに? スリが王子さまって、いったいどういうこと?


  とてもしっかりしたストーリーで、アンデルセンなど外国の童話を思わせますが、もともとミュージカル用に書かれたお話だったそうです。そしてパステル画の挿絵もやはり外国絵本のような雰囲気ですが、絵作者の安井さんが、この絵本の為にヨーロッパまで街並みのスケッチに出かけて完成させたそうです。

 ストーリーも絵も子供だましではなくて、才能の凝集のような絵本なんですが。。。しつこいようですが、なんで絶版だったのでしょう?

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