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絵本紹介(136) ハリネズミと金貨2014年10月16日 23:30

題名   : ハリネズミと金貨
原作   : ウラジミール オルロフ
絵     : ヴァレンチン オリシヴァング
訳     : 田中 潔
発行所  : 偕成社

 今回はお金が本来持つ意味、人と人が助け合って生きることの意味を考えさせてくれる、ロシアのお話しのご紹介です。


 ハリネズミのおじいさんは、森の小道を歩いていて、一枚の金貨を拾いました。
 すっかり
歳をとって、冬ごもりの仕度が大変になってきたハリネズミは、拾ったお金で干しキノコを買って、冬をのんびりと過ごしたいと思いました。

 でも、あちこち探しても、もう干しキノコはどこにも売っていません。

 すると、ハリネズミが途方にくれている姿を見たリスは、自分の干しキノコをただで分けてくれました。そしておじいさんの靴はボロボロだから、その金貨は靴を買うのに使えばいいと言いました。


 ハリネズミのおじいさんは、今度はどこかで靴が売っていないか探しながら歩いていると、カラスがどうしたんだと事情を尋ねてきました。
 ハリネズミが金貨で靴を買うつもりだと言うと、靴くらい自分が作ってやると言って、ドングリをくりぬいて素敵な靴を作ってくれました。そして、金貨は靴下を買うのに使えばいいと言います。

 その後も、暖かく冬を過ごすための靴下はクモが、咳止めのハチミツはクマが、親切に分けてくれて、ハリネズミのおじいさんは結局金貨を使いませんでした。


 さて、周りの好意で欲しいものがみんな手に入ったおじいさん、金貨をどうしたと思いますか?
 キャバクラでぜーんぶ飲んじゃった?来春必要なものを買うためにとっておいた?NISAで運用した?

 いえいえ。
 「誰かの役に立つかもしれんしな」と、 おじいさんは金貨を拾った場所にもう一度置いたのでした。

 翻訳者の田中潔さんのあとがきが素敵なので、そのまま引用させていただきます。
 「ロシアの人々が20世紀の大半を過ごしたのは、市場の働きが弱く、必要なときに必要なものを得にくい社会でした。そこではお金だけあってもあまり役にたたず、知人友人の間で必要な物や情報やサービスを融通しあわねばならないことが多々ありました。(中略)困った時に頼りになるのは、困っている時に助けた人。でもどういう人を助けることが将来役に立つかなんて、誰にもわかりません。だからロシアには不幸な人、困っている人を目にしたとき、損得計算抜きに自然な感情のまま手を差し伸べる人が多かったのです。」

 冷戦時代、ロシアを始め行き詰った社会主義の国の様子を聞くと、可愛そうに、あぁ自由主義の国に生まれてよかったと思ったものです。
 でも、本当にそうだったのでしょうかね。