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絵本紹介(91) かあさんをまつふゆ ― 2014年05月04日 23:40
題名 : かあさんをまつふゆ
文 : ジャクリーン ウッドソン
絵 : E.B.ルイス
訳 : さくま ゆみこ
出版社 : 光村教育図書
物語は第二次世界大戦さなかのアメリカの田舎町が舞台。
貧しい家庭の娘エイダ・ルースが、都会に出稼ぎに行った母親が留守の冬を、祖母と家に迷い込んだ子ネコと一緒に過ごす。。。
言ってしまえばただそれだけの話なのですが、細密で重厚な絵と詩情豊かな物語が作り出す「静寂感」と「清涼感」が後を引いて、何故か何度か読み返してみたくなる絵本です。
「ねえ、エイダ・ルース、シカゴでは黒人の女でも雇ってくれるんですって。戦争があって男たちが出て行ってしまったからよ。」
かあさんがそう言いながら、私が大好きな暖かくて柔らかな手で、シカゴに旅立つ荷造りを続けています。その姿を見て、私は涙がこぼれそうになります。
そんな私をお母さんは抱きしめてほっぺたをくっつけて、「あなたのことが、世界中の何よりも大好き。」と言ってくれます。もう100回も10万回も繰り返されたいつものやり取りです。
かあさんがいなくなって、寂しくて泣いてしまう私に、おばあちゃんは「泣くんじゃない、きっと大丈夫さ。」と慰めてくれます。
戦争で食べ物がほとんど手に入らないこともありました。
朝も夜も、トウモロコシのパンと酸っぱくなりかけたミルクだけ。
ある雪の朝、小さな黒い子ネコが入れてと家のドアをひっかきました。
「猫なんか飼えなんだよ、わかってるね。」とお婆ちゃんは言いながら、お皿にミルクを入れて床に置いてくれました。
おかあさんには何度も手紙を書きました。
でもお母さんは行ったきり、手紙もお金もとどきません。
郵便屋さんが通りすぎる度に、おばあちゃんは「大丈夫、泣くんじゃないよ。」と私に言ったけれど、一番泣きたかったのはおばあちゃんだったのかもしれません。
かあさんをまつ冬は続きます。
たった3人の家族なのに、家計を支えるために愛する娘を置いてシカゴに行かなければならなかったおかあさん。
泣いてわめいておかあさんを引き留めたかったけど、どうしようもないことを知っていて寂しさに耐えるエイダ・ルース。
孫とふたり留守宅を守らなければならない責任に不安いっぱいなのに、気丈に振舞うおばあさん。
みんなギリギリのところで暮らしながら、愛し合って信じあって、固いきづなで結ばれているんですね。
今気づきましたが、読み終えた後の静寂感は貧しさとつらい運命の哀愁から、清涼感は愛し合い支え合う理想の家族像から感じたのかもしれません。
登場人物の中で、厳しい言葉を発しながら子ネコにエサと暖かい寝床を与えるおばあさんが、私は一番好きかな。
文 : ジャクリーン ウッドソン
絵 : E.B.ルイス
訳 : さくま ゆみこ
出版社 : 光村教育図書
物語は第二次世界大戦さなかのアメリカの田舎町が舞台。
貧しい家庭の娘エイダ・ルースが、都会に出稼ぎに行った母親が留守の冬を、祖母と家に迷い込んだ子ネコと一緒に過ごす。。。
言ってしまえばただそれだけの話なのですが、細密で重厚な絵と詩情豊かな物語が作り出す「静寂感」と「清涼感」が後を引いて、何故か何度か読み返してみたくなる絵本です。
「ねえ、エイダ・ルース、シカゴでは黒人の女でも雇ってくれるんですって。戦争があって男たちが出て行ってしまったからよ。」
かあさんがそう言いながら、私が大好きな暖かくて柔らかな手で、シカゴに旅立つ荷造りを続けています。その姿を見て、私は涙がこぼれそうになります。
そんな私をお母さんは抱きしめてほっぺたをくっつけて、「あなたのことが、世界中の何よりも大好き。」と言ってくれます。もう100回も10万回も繰り返されたいつものやり取りです。
かあさんがいなくなって、寂しくて泣いてしまう私に、おばあちゃんは「泣くんじゃない、きっと大丈夫さ。」と慰めてくれます。
戦争で食べ物がほとんど手に入らないこともありました。
朝も夜も、トウモロコシのパンと酸っぱくなりかけたミルクだけ。
ある雪の朝、小さな黒い子ネコが入れてと家のドアをひっかきました。
「猫なんか飼えなんだよ、わかってるね。」とお婆ちゃんは言いながら、お皿にミルクを入れて床に置いてくれました。
おかあさんには何度も手紙を書きました。
でもお母さんは行ったきり、手紙もお金もとどきません。
郵便屋さんが通りすぎる度に、おばあちゃんは「大丈夫、泣くんじゃないよ。」と私に言ったけれど、一番泣きたかったのはおばあちゃんだったのかもしれません。
かあさんをまつ冬は続きます。
たった3人の家族なのに、家計を支えるために愛する娘を置いてシカゴに行かなければならなかったおかあさん。
泣いてわめいておかあさんを引き留めたかったけど、どうしようもないことを知っていて寂しさに耐えるエイダ・ルース。
孫とふたり留守宅を守らなければならない責任に不安いっぱいなのに、気丈に振舞うおばあさん。
みんなギリギリのところで暮らしながら、愛し合って信じあって、固いきづなで結ばれているんですね。
今気づきましたが、読み終えた後の静寂感は貧しさとつらい運命の哀愁から、清涼感は愛し合い支え合う理想の家族像から感じたのかもしれません。
登場人物の中で、厳しい言葉を発しながら子ネコにエサと暖かい寝床を与えるおばあさんが、私は一番好きかな。
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