http://apricot-tree.asablo.jp/blog/img/2013/06/17/29f71b.jpg

絵本紹介(88) ベルナルさんのぼうし2014年04月23日 22:20

題名    : ベルナルさんのぼうし
作     : いまいあやの
出版社  : BL出版

 今回ご紹介する絵本は、とても繊細なタッチの優しい絵が魅力の若手絵本作家、いまいあやのさんの最新作です。

 クマのベルナルさんには友達がいません。家族も無くて一人で暮らしていますが、「だれにもうるさく構われることの無い暮らしは気楽でいい。」と平気です。


 ある日ベルナルさんがお気に入りの帽子をかぶって散歩の途中で昼寝をしていると、一羽のキツツキがベルナルさんの帽子を気に入って巣を作り始めました。

 家に帰ったベルナルさんは、帽子にキツツキが住み着いているのを見てびっくり、「すぐに出て行ってくれよ!」と頼みますが、キツツキは動きません。

 それどころか、他の小鳥まで飛んできてベルナルさんの帽子に巣を作ってしまいました。


 すると不思議なことに、やってくる小鳥が増えてくると、それに合わせて帽子がどんどん高くなっていきました。
 はじめは戸惑っていたベルナルさんですが、鳥たちが楽しげに歌ったり遊んだりする様子をみているうちに、少しずつ楽しい気持ちになっていきました。

 そんな風にベルナルさんと鳥たちの不思議な関係が続きましたが、秋がきて草木が色づいたある朝、ベルナルさんの帽子から鳥たちがいなくなって空っぽに戻ってしまいました。

 鳥たちがいつ戻っても良いように餌を用意して待つベルナルさん。でも冬が来るとベルナルさんもいつか深い眠りに落ちて行ってしまいます。

それにしても、キツツキはなぜ誰ともかかわろうとしなかったベルナルさんの帽子に巣を作ったのでしょうね?小鳥たちが次々ベルナルさんの帽子に住み始める様子を見て、他の人も真似て帽子をかぶってみましたが、鳥たちは見向きもしませんでした。
 見た目がとても頑固そうなおじいさんに、犬や猫が妙になつくのとどこか似ています。鳥にはベルナルさんの本当は優しい心根が感じ取れたのかもしれませんね。

 ある朝、誰かがドアをノックする音で目覚めるベルナルさん。季節はすっかり春になっていました。
 冬の間だれも世話する人がいなかったあの帽子ですが、素敵な姿になって春を迎えました。