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サギでしょう?2013年09月27日 22:45

 私の感覚では立派なサギだと思うのですが、不思議とそれほど報道もされず、警察が動く様子のない事件があります。

 大手製薬メーカーのノバルティスの大ヒット高血圧薬ディバオン(一般名 バルサルタン)の臨床データーが意図的に書き換えられて、ありもしない効能が付け足されていました。

 京都府立医科大学と慈恵医大とが、ノバルティスに依頼されてそれぞれ行ったすごく規模が大きい臨床試験で、ディバオンが他の高血圧薬では見られなかった、脳梗塞や心筋梗塞の発生リスクを低下させるという結果を得たと、医者ならば誰でも知っているイギリスの権威ある雑誌などで論文として発表しました。

 また、国内の循環器内科学会の大物たちも、ディバオンは素晴らしい薬だと大いに持ち上げました。

 その結果、多くの医師が権威ある雑誌と権威ある学者を信じ切って、「同じ高血圧薬で同じ値段で、脳梗塞なども抑えるのだったらディバオンを使おう。」ということになって、ディバオンの昨年の売り上げは1000億円を超えたそうです。

 ところが、論文が発表された当初から、試験のやり方や、日本以外の国ではそんな臨床データーが出ていないことを不思議に思った一部の研究者の追跡で、実は京都府立医大の試験も、慈恵医大の試験も、どちらも最終的にノバルティスの社員がデータをまとめて、この時にディバオンが有利に見えるようにデータを書き換えていたことが明らかになりました。

 つまり、科学的に公平な臨床試験を装って、製薬会社に都合の良い結果がねつ造されていたんです。
 実際のカルテを一つ一つ見直してみると、ディバオンは比較した高血圧薬より優れているどころか、同じかむしろ血圧を下げる効果がやや弱いくらいだそうです。

 これは、一般社会で言えば明らかにサギですよね。

 ところが今年初めにはすでに論文偽物疑惑が浮上して、4月には論文の取り下げという騒ぎになったのに、いまだに会社も個人もなんの刑事罰も問われていません。
 ここに来て、ようやく厚生労働省が、効能の誇大広告で薬事法違反の疑いで調査を開始するらしいです。

 臨床試験にかかわった医師たちも、これはすごいと持ち上げた権威学者たちも、自分たちはなんにも知らない、論文を信じただけだと被害者顔の様ですが、そんなわけがない。あまりに都合のよすぎるデータに、きっと違和感は感じていたはずです。

 嘘をついて何百億円も不当な利益を上げたのに、関係者がサギの罪に問われることが無い。
 権威と言われる科学者のくせに自分の頭で考えもせず、製薬会社からお金を貰ってディバオンを宣伝しておいて、自分も被害者だという厚顔無恥。

 世の中の権威なんて、実は一皮むけば浅ましくて臆病なリスザルが多いのかもしれませんね。
 こういう事件がきっちり検証されて責任が明らかにならないと、やったもの勝ちみたいな社会になってしまうので、是非シロクロ明らかにしてほしいものです。