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絵本紹介(35) せかいいち うつくしい ぼくの村2013年09月23日 23:25

せかいいちうつくしいぼくの村
題名   : せかいいち うつくしい ぼくの村
文     : 小林 豊
絵     : 小林 豊
出版社  : ポプラ社

 この絵本の舞台は1978年の王政打破の革命以来、内紛や外国からの干渉で、戦火の絶えないアフガニスタンが舞台です。小学校の国語の教科書に取り上げられた物語とのことで、ご存じの方も多いかもしれません。

 アフガニスタンは1年間に降る雨が極端に少ない気候で、ニュースなどで伝わる映像から想像するアフガニスタンのイメージは、緑少ない乾いた土地と、日干し煉瓦造りの家で暮らすおなかをすかせた人びとです。
 でも、かつては山の万年雪の雪解け水が大地を潤し、緑に覆われた美しい国だったというのです。

 物語の舞台のパグマン村は、そんな美しい風景に包まれた平和な村で、春にはすもも、桜、梨、ピスタチオが一斉に咲いて、花でいっぱいになります。
 そして夏になると村の人たちは、家族みんなで太った杏、すもも、サクランボをもぎとって街に売りに出かけるんです。

 村の子供ヤモは、今年初めてお父さんと街に果物売りにでかけることになりました。去年までは兄さんの役目でしたが、今年兄さんは戦争に行ってしまったので、ヤモが代わりを務めます。

 街につくと、ヤモは荷物を運ぶロバと歩きながらサクランボを売り、お父さんは市場ですももを売って、どちらも夕方までに無事全部売り切ることができました。
 そしてお父さんは、売ってもうけたお金を全部使って、一頭の白い美しい子ヤギを買いました。
 ヤモは村に連れて帰った子ヤギに、はやく兄さんが戦争から無事帰ってくるように願いを込めて、春と言う意味の”バハール”と言う名前を付けました。

 しかし、

 ヤモが幸せな暮らしを送り、兄の無事を祈ったパグマン村ですが、次の冬に戦争で破壊されて、平和のままで春を迎えることができませんでした。

 とても物悲しい物語ですが、作者の小林豊さんがかつてアフガニスタンで経験した実話に基づいて書いた物語だそうです。
 この物語が初めて出版されたのは1995年。その後もアフガニスタンではイスラム原理主義とアメリカを中心とする国々との戦いが新たに起こり、いまも終息していません。

   どうしていつもつつましく誠実に生きている人たちが犠牲になってしまうのでしょう。
 アフガニスタンに一日も早く昔の美しい緑の大地が戻るよう、心から祈ります。