http://apricot-tree.asablo.jp/blog/img/2013/06/17/29f71b.jpg

絵本紹介(24)2013年08月18日 15:50

ポテトスープが大好きな猫
題名   : ポテト・スープが大好きな猫
文     : テリー ファリッシュ
絵     : バリー ルート
訳     : 村上 春樹
出版社  : 講談社

 今日の絵本は、村上春樹さんがアメリカの街の本屋で偶然見つけて、気に入って翻訳してしまった本だそうです。なんかかっこいい逸話ですね。言ってみたいなー、「気に入ったから、ちょっと訳しちゃった。」って。

 テキサスの田舎で、生まれも育ちもテキサスのおじいさんが、一匹の年取った雌猫と住んでいました。
 おじいさんはこれまで沢山の猫と暮らしてきましたが、今一緒にいる猫のことが結構気に入っています。でもそんなそぶりはちっとも見せません。

猫はおじいさんのポテトスープが大好きでした。

 猫はネズミ一匹捕まえたことがなくて、おじいさんがつくるポテト・スープが大好きです。そんなところも、おじいさんが猫を気に入っている理由の一つでした。

おじいさんと猫は湖で釣りをします。

 おじいさんと猫は、よくピックアップトラックに乗って湖に釣りに出かけます。猫はおじいさんが操るボートのへ先で、まるでかざりものの様にじっとしているだけで、何もしません。おじいさんが釣り上げる魚はたいがい小さくて、今度はもっとおおきくなっているんだぞと言い聞かせて、キスをして逃がしてやります。二人は、そんなゆっくりした時間を過ごしていました。

 猫に電気毛布を用意してあげてから数日たったある冬の朝、いつもの様に魚釣りに出かける時間になっても猫が起きてきません。おじいさんは寝床の猫に声をかけてみますが、猫はぐっすり。
 「猫がいなくて、どうだっていうんだ?」とひとりごちて、おじいさんは一人で釣りに出かけましたが、なんか調子が出ません。

   釣りから戻って、おじいさんは猫を探しましたが、どこにも見当たりません。そして数日経っても、猫は戻ってきませんでした。
 「おこってしまったことはしょうがない。」
 おじいさんは、さびしそうにピックアップトラックで釣りに出かけます。

 この絵本は、おじいさんと年とった雌猫の”うまくいっている”関係と、静かな日常に起きたちょっとしたハプニング、そしてその後に再びの平穏の予感を描いています。

 訳者の村上春樹さんが解説で、おじいさんのテキサス訛りをしっくり訳せなかったと残念がっていますが、いえいえどうして。おじいさんと老猫のゆっくりとした時間の使い方が伝わってくる、いかにもアメリカの田舎にありそうな、とてもほっとする物語になっていると感じました。

あげないわよ!

 結末のあらすじばらしちゃうと、猫は何日かしておじいさんの家に戻ってきます。しかも大きな魚を捕まえて。でもおじいさんに魚をあげようとはせず、ひとり家に置いていかれてどんな気がしたか、その魚を捕まえるのにどれだけ苦労したのか、とうとうと(ニャアニャアと?)おじいさんに訴えます。かなり長い複雑な話を、おじいさんはじっと聞いてあげるんです。

 なんか、この際の間柄はヒトと猫じゃなくて、夫婦のようで、人生のパートナーのようで、ほほえましくなりました。 だって、我が家でも最近増えたすれちがいと諍いと仲直りのパターンまんまじゃない。
 村上さんに言わせると、この扱いにくさが、年とった雌猫の魅力なんだそうです。(いや、べつにUshiさんが年とった雌猫と言っているわけでは、無くてですね。。。)

 村上春樹さんの解説も楽しい、老いることも悪くないと思えるお話です。